河川性サケ科魚類のメタ個体群動態 : 個人レベルの大規模長期研究(<特集2>大規模長期生態学研究とは何か?)
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概要
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『大規模長期生態学研究』の定義およびその必要性に関する考えは、研究者ごとに大きく異なる。本稿では、まず『大規模長期生態学研究』を"個体群-個人(グループ)"レベルと"生態系-プロジェクト"レベルの研究に分けて定義づけ、それぞれのレベルにおける研究の必要性について考察する。次に、"個体群-個人"レベルの研究のひとつとして、筆者が7年間にわたり調査を続けてきた、河川性サケ科魚類のメタ個体群動態の研究を紹介する。ここでは、ひとつの対象種に対して様々な研究テーマおよび研究手法を統合することにより、対象種の生態学的現象がより深く理解できることを示す。このような研究分野を統合したアプローチは長期間の継続調査において実現可能性が高い。具体例として、遺伝的解析を大規模長期野外調査に組み入れることにより、個別の研究では分からなかった河川性サケ科魚類の詳細な個体群構造が明らかとなったことを示す。さらに、これらの遺伝的、生態的野外データを理論モデルの枠組みに続合し、野外で実証が困難なメタ個体群動態をシミュレーションにより解析した研究を紹介する。このメタ個体群動態モデルにより、河川生物の保護管理に有効な提言が可能となった。最後に、筆者がこの"個人レベル"における『大規模長期研究』を通して得た教訓などについて率直な意見を述べる。ここでは幾つかの具体例を挙げて、『大規模長期生態研究』を行なう上では、研究者のみならず多くの人達との繋がり(ネットワーク、コミュニケーション)が不可欠であると結論付ける。
- 日本生態学会の論文
- 2005-08-31
著者
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小泉 逸郎
北海道大学地球環境科学研究院
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小泉 逸郎
Department of Biological and Environmental Sciences, University of Helsinki
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