非小細胞性肺癌におけるベバシズマブ(Avastin^<TM>)の臨床成績(セッションIV,第20回日本肺癌学会肺癌ワークショップ)
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概要
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肺癌による死亡は全癌死の約3分の1を占め,乳癌,前立腺癌及び結腸癌による死亡を総合した数よりも多い.肺癌を発症した患者の約85%はその疾患により死亡する.ヒト化抗VEGF MAb(モノクローナル抗体)であるベバシズマブ(bevacizumab; Avastin^<TM>)のこの肺癌における臨床成績を紹介する.肺癌における化学療法と組合せたベバシズマブの安全性ならびに有効性の最初の検討は,無作為化第II相試験にて検討された.NSCLCを有する99例の患者が,カルボプラチン/パクリタキセル(CP)を3週間毎に6サイクルを投与する群,これに7.5mg/kgのベバシズマブを3週間毎に併用投与する群,及び15mg/kgのベバシズマブを3週間毎に併用投与する群,の3治療群に無作為に割付けられた.致死性の出血がベバシズマブの併用群で9%(6/66)の発現頻度で観察され,これらの発現には,ベースラインにおける喀血及び組織学所見,という2つの危険因子が認められた.扁平上皮の組織学所見を有する患者を除いてサブグループ解析を行ったところ,CPとベバシズマブの併用の有効性はより明確になることが示された.ここで注目すべきことは,この無作為化第II相試験では,治療群と対照群では予後に影響を与える主要な背景因子が均衡しておらず,ベバシズマブの至適用量について決定的な結論は得られない点であった.その後米国の共同グループであるECOGは,上述の治験の所見に基づいて,第III相試験,E4599を計画し,カルボプラチン/パクリタキセル(CP)3週間毎の投与×6回と比較して,CP+ベバシズマブ15mg/kg3週間毎の投与×6回に次いで疾患進行までベバシズマブを単剤投与する治療の効果を検討した.この試験には878例の患者が登録された(対照群:444例,ベバシズマブ治療群:434例).2回目の中間解析が484番目の死亡例が出た時点で行われた(2005年のASCOで結果公表).ベースラインにおける諸因子は,2治療群間で良く均衡がとれていた.有効性に関しては,ベバシズマブによる治療は奏効率を10.0%から27.2%(p<0.0001)に,無増悪生存期間を4.5から6.4ヶ月(HR0.62;p<0.0001)に,全生存期間を10.2ヶ月から12.5ヶ月(HR=0.77;p=0.007)に増加した.安全性に関しては,好中球減少症はベバシズマブ併用群においてより高頻度(16.4対24%)に発現したが,血小板減少症,貧血及び発熱性好中球減少症においては有意な差は認められなかった.ベバシズマブの使用に伴って生じると考えられている出血及び高血圧等の典型的な有害事象は,ベバシズマブ併用群においてより一般的にみられた.静脈性及び動脈性血栓症の発現に関しては,2治療群間で差はみられなかった.E4599はNSCLCに関して標準的なプラチナ含有2剤併用に対し生物学的製剤を加えた3剤併用において,「生存期間の延長」を明確に示した最初の第III相比較試験である.ベバシズマブは非扁平上皮NSCLCを有する患者においてカルボプラチン/バクリタキセル化学療法と併用された場合,全生存期間を有意に改善することが確認された.又,ベバシズマブの併用により奏効率及び無増悪生存率が有意に改善された.一方,ベバパシズマブは喀血を含む重篤な出血の僅かな増加を伴うことが示された.ベバシズマブ+カルボプラチン/パクリタキセルは今やECOGの進行非扁平上皮NSCLCに対するファーストラインの治療の基準となっている.
- 2006-06-20
著者
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Frings Stefan
Deputy Life Cycle Leader For Avastin^<tm> F. Hoffmann-la Roche Ltd.
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Frings Stefan
, F. Hoffmann-La Roche Ltd.