多量窒素連用条件下のオーチャードグラス単播草地における重窒素標識硫安の動態
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概要
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黒ボク土を充填した土壌深230cmのライシメーターを用い,多量窒素連用条件下のオーチャードグラス単播草地における施用^<15>Nの動態を3年間調査した。^<15>N標識硫安250, 500, 1,000kg N ha^<-1>を試験開始直後(9〜11月)に施用した(以後,これらの処理区をN250区, N500区,N1000区とする)。試験開始1年目の作物体^<15>N標識硫安由来窒素(NDF)吸収量はN250区と比べてN500区,N1000区で著しく多かったが,以降の2年間のNDF吸収量は処理区にかかわらずわずかであった。N250区,N500区では試験開始後年数にかかわらず土壌中に存在するNDFのうち54.5〜76.8%が表層(0〜20cm)に存在しており,下層(20〜230cm)への移行量は少なかった。これらの処理区では,試験開始後年数や土壌深にかかわらず土層全体に存在するNDFのうち89%以上がKCl非交換性として存在していた。N1000区では試験開始1年後に土壌に存在するNDFのうち表層に分布する量はわずか20%であったが,それより下層では相当量のKCl交換性NDFが認められた。この処理区の下層ではKCl交換性NDF量が経年的に減少する一方で,KCl非交換性NDF量は著しい変動を示さなかった。N250区,N500区では作物体,土壌への分配の計が施用量NDF量の約90%となり,溶脱量は施用NDF量のそれぞれ0.03, 0.28%と極めて少なかった。一方, N1000区では他の処理区と比べて作物への分配が著しく低く(38.7%),溶脱への分配は著しく高くなった(22.5%)。浸透水中の硝酸性窒素濃度は, N250区,N500区では試験開始11カ月目以降,10mg N L^<-1>以下で推移したが, N1000区のそれは増加し,試験開始3年後には50.3mg N L^<-1>に達した。N500区の土層全体の硝酸態窒素量は経年的に増加しており,今後,連用を続ければ,いずれ浸透水中硝酸態窒素濃度が水質基準を超過する可能性が高いと考えられた。以上のことから,N250,N500区においてNDF溶脱量が極めて少なかったのは,土壌におけるNDFの有機化および作物体によるNDFの吸収が相加的に作用した結果と推察された。
- 2005-10-05
著者
-
森 昭憲
農業・食品産業技術総合研究機構 畜産草地研
-
松波 寿弥
畜産草地研究所:(現)森産業株式会社
-
寳示戸 雅之
(独)農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所
-
寳示戸 雅之
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構畜産草地研究所
-
森 昭憲
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構畜産草地研究所
-
寶示戸 雅之
畜産草地研
-
松波 寿弥
独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構畜産草地研究所
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