ニホンナシ'幸水'の果実肥大期における窒素追肥が収量,果実品質および土壌溶液中の硝酸態窒素濃度に及ぼす影響
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概要
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茨城県におけるニホンナシの主力品種'幸水'では,近年窒素施肥量が増加する傾向にあり,施肥改善が必要となっている.筆者らは前報で,'幸水'は果実肥大中期(6〜7月)の窒素吸収割合が高いことを報告した.本報では'幸水'の施肥改善を目的に,この吸肥特性に基づく果実肥大期の窒素追肥の影響を検討した.この結果,以下の知見が得られた.1)年間総窒素施肥量の2割を5月下旬に追肥した結果,収量,果実品質に及ぼす追肥の効果は認められなかった.そこで,総窒素施肥量の3割を5月上旬と6月上旬とに分肥する設計に変更した結果,本県の施肥基準の体系である追肥無区と比較して1果重が増加し,2割減肥をしても施肥基準量と同等の収量,果実肥大が確保された.2)主要根群域の窒素含量を診断する指標とした,地表下20cmにおける土壌溶液中の硝酸態窒素濃度をみると,総窒素施肥量の3割を5月上旬と6月上旬とに分施した区では,追肥無区と比較して窒素吸収割合の高い6〜7月に硝酸態窒素濃度が高く推移し,このことが収量,1果重の増加に有効であったと考えられる.3)根域からの硝酸態窒素の溶脱を示す指標とした,地表下100cmにおける土壌溶液中の硝酸態窒素濃度をみると,各区とも10mg L^<-1>前後で推移したが,測定期間中一時的に20mg L^<-1>以上に上昇した.これは樹冠面積が成木の水準に達していなかったにもかかわらず,樹齢別施肥基準量に基づき機械的に窒素施肥量を増加させたことが主な原因と考えられる.4)供試園では開園以降,試験区を除き樹齢別施肥基準量の窒素が施肥されてきた.本ナシ園の地表下100cmにおける土壌溶液中の硝酸態窒素濃度は概ねIOmg L^<-1>前後で推移したこと,また,地下水中の硝酸態窒素濃度は最高値で9.5mg L^<-1>まで上昇したものの,環境基準値の10mg L^<-1>以下で推移したことなどから,本県の窒素施肥基準量(成木で250kg ha^<-1>)が表層腐植質黒ボク土のナシ園における窒素環境容量に相当することが示唆された.5)以上の結果,'幸水'では窒素の施肥配分を基肥(11〜2月):追肥1(5月上旬):追肥2(6月上旬):礼肥(収穫直後)=5:1.5:1.5:2とすることにより,施肥基準の体系である追肥無区と比較し収量・果実品質を落とすことなく2割の減肥が可能と考えられる.
- 2005-04-05
著者
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折本 善之
茨城県農業総合センター園芸研究所:(現)茨城県農業総合センター笠間地域農業改良普及センター
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武井 昌秀
茨城県農業総合センター園芸研究所
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武井 昌秀
茨城県農業総合センター園芸研究所:(現)茨城県立農業大学校園芸部
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小山 田勉
茨城県農業総合センター園芸研究所
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小山 田勉
茨城県農業総合センター園芸研究所:(現)茨城県立農業大学校
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折本 善之
茨城県農業総合センター園芸研究所
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折本 善之
茨城県農業総合センター
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