高齢者の口腔微生物叢に関する研究 : 70歳者の口腔状態と口腔微生物叢
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概要
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70歳者の口腔状態と口腔微生物叢との関連情報を得ることを目的に,新潟市在住70歳者43名を対象にべースライン調査した.口腔状態としては保有歯数,義歯装着の有無,唾液分泌速度(唾液量),唾液緩衝能(緩衝能),舌苔培養時のpHおよび舌苔からのメチルメルカプタン(CH_3SH)産生量を,口腔微生物叢としては舌苔のFusobacteria,Staphylococci,Candida,唾液中のMutans streptococci,Lactobacilliならびに歯肉溝浸出液中の黒色色素形成桿菌(BPR),歯肉溝浸出液中の総嫌気性細菌を調査した.その結果,平均保有歯数は18.7±8.2本,義歯装着率は58.1%であった.さらに,各調査項目間のSpearmanの順位相関係数は,舌苔のCH_3SH産生量が舌苔培養時のpH,Fusobacteriaおよび歯肉溝浸出液中の総嫌気性細菌数との間に正の関連性を示した.義歯装着の有無はLactobacilliと正の関連性が,Fusobacteriaと負の関連性が認められた.唾液量は,緩衝能と正の関連性が認められ,CandidaやStaphylococciと負の関連性が認められた.また,回帰分析による舌苔のCH_3SH産生量はFusobacteriaと正の相関(r=0.435,p<0.01)が,唾液量はCandidaと負の相関 r=-0.357,p<0.05)を示した.ステップワイズ法による重回帰分析により,舌苔のCH_3SH産生量ならびに唾液量に対する説明変数を調査した結果,舌苔のCH_3SH産生量に対して舌苔培養液のpH,唾液緩衝能,FusobacteriaおよびMutans streptococciが,唾液量に対しては唾液緩衝能とCandidaが選ばれた.1998年のベースライン調査後,1999,2000年の調査に連続参加した25名については,さらに,口腔状態と口腔微生物叢の経年変化を調べた.しかし,口腔状態の有意な変化は認められず,口腔微生物叢のLactobacilliおよびMutans streptococciに減少が認められた.以上より,70歳者の口腔状態として舌苔のCH_3SH産生量や唾液量に関連する口腔微生物叢としてFusobacteria,Candidaの存在が示唆された.また,2年間の連続調査期間では口腔状態の変化は認められなかったが,口腔微生物叢としてLactobacilliおよびMutans streptococciの変化が認められた.
- 有限責任中間法人日本口腔衛生学会の論文
- 2006-01-30
著者
-
安藤 雄一
国立保健医療科学院
-
前田 伸子
鶴見大学歯学部口腔細菌学教室
-
宮崎 秀夫
新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学専攻口腔健康学講座予防歯科学分野
-
宮崎 秀夫
九州歯科大学口腔衛生学教室
-
宮崎 秀夫
新潟大学大学院医歯学総合研究科
-
宮崎 秀夫
新潟大学大学院口腔健康科学講座
-
渋谷 耕司
財団法人ライオン歯科衛生研究所
-
渋谷 耕司
(財)ライオン歯科衛生研究所
-
前田 伸子
鶴見大・歯・口腔細菌
-
前田 伸子
鶴見大学歯学部細菌学教室
-
石川 正夫
(財)ライオン歯科衛生研究所
-
譽田 英喜
国立長寿医療センター
-
武藤 隆嗣
鶴見大学歯学部歯科麻酔学教室
-
武藤 隆嗣
鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座
-
渋谷 耕司
財団法人 ライオン歯科衛生研究所
-
渋谷 耕司
ライオン歯科衛生研究所
-
宮崎 秀夫
新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔健康科学講座予防歯科学分野
-
安藤 雄一
国立保健医療科学院口腔保健部口腔保健情報室
-
前田 伸子
鶴見大学歯学部口腔細菌学講座
-
前田 伸子
鶴見大学歯学部細菌学講座
-
安藤 雄一
国立保健科学院生涯健康研究部
-
石川 正夫
公益財団法人ライオン歯科衛生研究所
-
前田 伸子
鶴見大学歯学部口腔微生物学講座
-
安藤 雄一
国立保健医療科学院・生涯健康研究部
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