植物染色体の姉妹染色分体交換 : I. 標本作成法の改良
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概要
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本論文は,植物細胞における姉妹染色分体の分染法の改良と姉妹染色分体交換(SCEs)についての予備的研究について報告したものである。ソラマメおよびタマネギの根を5-プロモデオキシウリジン(BrdU,30.0μg/ml)単独液あるいはBrdU,5-フロロデオキシウリジン(FdU,0.025μg/ml)およびウリジン(Urd,1.221μg/ml)の混合液中で2細胞周期培養した。培養した根を0.1%コルヒチン液に3時間浸したのち,酢酸アルコールで固定した。その根をpH4.5のマッキルベイン緩衝液に溶解した4%セルラーゼ(オノズカR-10)と4%ペクチナーゼ(シグマ)の混合酵素液で,37℃,1時間解離した。解離した根を蒸留水で洗い,1本をスライドグラス上にとり根端のみを有柄針で砕いた。その根端片の上に新しい酢酸アルコール液を2〜3滴おとし,アルコールランプの炎で燃して乾燥した(フレームドライ法)。このスライドグラスを0.5×SSCに溶解した蛍光色素ヘキスト33258(5μg/ml)で25分間染色した。0.5×SSCで洗ってから,同じ液をのせ,カバーグラスの周囲をマニキュアで封じたのち,超高圧水銀灯の強い光で1時間,続いて15Wの殺菌灯で1晩10cmの距離からスライドグラスを照射した・カバーグラスをはがしたのち,スライドグラスは55℃の0.5×SSC中で1時間熱した。その後,1/15Mのゼーレンゼンりん酸緩衝液(pH6.8)で稀釈した3%ギムザ液で6分間染色し,蒸留水ですすぎ,自然乾燥後ユーキットで封入し永久標本とした。上述の改良FPG法により,BrdU単独投与した根端細胞において鮮明な姉妹染色分体とSCEsが観察できた。その結果,SCEs頻度は染色体の長さに比例して生ずること,およびFdUを加えるとSCEs頻度が約2倍に増えることが明らかとなった。さらに,SCEsは動原体部位や仁形成部を含めた異質染色質部位より真正染色質部位で高頻度に生ずることがわかった。最後に,植物細胞にのみ観察される半染色分体様交換(SsCE)の出現する意味について考察した。
- 千葉大学の論文
- 1983-12-20