富士山の帰化植物
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
帰化植物は種数が多く,地域の植物相の重要な要素となっている.また,環境が変化した場所に侵入することが多く,帰化植物の分布状況は自然環境の改変を示唆すると考えられている.このような観点から富士山の帰化植物の分布を梅村(1923),近田・杉本(1983)の植物相調査と比較し,また垂直分布に注目して調査した.梅村(1923)には,1,110種の分布が記録されこの内,帰化植物は5種である.近田・杉本(1983)は,1,557種を記録し,この内,帰化植物は86種である(表1).今回の調査では31科113種の帰化植物を記録した.近田・杉本(1983)以後に新たに記録された種は42種である.これらの内,ナガミゲシ,ショカツサイ,シンジュ,オッタチカタバミ,マツヨイグサ,アレチウリ,ウラジロチチコグサ,セイバンモロコシは,東京とその近郊では普通であるのに,富士山ではごく限られた小地域で生育していて,最近富士山に侵入したことを思わせる.富士山の南面と北面では帰化植物の分布に違いが見られた.南面では86種が記録されこの内,40種は南面でのみ記録された.北面では53種で,17種は北面のみの記録である.南面は交通の便が良く都市化が進んでいるので,帰化植物の侵入口であることが予想される.帰化植物の垂直分布を,海岸から亜高山帯まで500mづつ標高を区切って各種の分布上限から調べると,大部分の帰化植物は標高1,000m以下に分布し,それより上では限られた少数の帰化植物が分布する.亜高山にまで分布できる帰化植物はセイヨウタンポポ,オオアワガエリ,カモガヤ,グンバイイナズナ,コイチゴツナギ等少数である.富士山の帰化植物数を他の地域と比較してみると,富士山では帰化植物数が少ないと言える.富士山の中腹以上の地表は火山灰で栄養や水分が乏しく,地表の大部分は帰化植物が生育し難い樹木の密生した森林で被われているいるので,帰化植物の生育できる範囲は限られていることが大きな原因ではないかと思われる.
- 国立科学博物館の論文
- 2002-12-25
著者
-
近田 文弘
国立科学博物館植物研究部
-
清水 建美
信州大学教養部生物学教室
-
清水 建美
清水植物研究室
-
清水 建美
Shimizu Botanical Laboratory
-
清水 建美
信州大学
-
清水 建美
白山高山植物研究会
関連論文
- 北陸地方およびその近隣地域のアザミ属植物の分類学的研究(2)アシウアザミ-京都府芦生産の一新種
- ワタムキアザミとヒダアザミの形態的変異と分布
- 中部日本産湿地生アザミの1新種
- タイ国の高等植物における温帯要素の分類・地理学的研究(3)
- フガクスズムシ(ラン科)の分類学的ノート
- 皇居吹上御苑の森林植生の更新
- 皇居吹上御苑の森林植生
- 沼津市千本松原海岸林の重態 : I. 海岸林の概要とベルトトランセクトによる植生調査
- エゾコザクラ(広義)の葉緑体DNAにおける種内変異
- 皇居吹上御苑の気象特性
- 伊豆須崎の植生
- 衛星データを用いた房総半島スギ林と地質の相関解析
- 人工衛星のデータを用いた皇居の植生解析
- 防潮堤が係わる海岸林の生育に関するリモートセンシング
- 1984年度タイ国植物調査の記録
- 1979年タイ国植物調査の記録
- 自然教育園の種子植物
- アケビ科の系統(第23回種生物学シンポジウム : 植物進化学での分子進化学的アプローチ)
- 皇居吹上御苑の維管束植物
- 本州中部地方の3山岳に生育するアキノキリンソウの頭花形態の変異
- クロユリの開花フェノロジーと自家不和合性
- 白山におけるアキノキリンソウ(広義)の頭花形態の垂直的変異
- ハクサンコザクラの保全生物学 : 遺伝的変異と集団の遺伝的文化
- クロユリの個体群動態の解析
- 伊豆須崎の維管束植物相
- 13-3 中国貴州省、雲南省の土壌の垂直分布(13.土壌生成・分類)
- 皇居の生物相 : I. 植物相
- 中国南東部に産するヤマホトトギス(ユリ科)に近縁な新種
- ホウヨウホトトギスの形態と分類学的位置
- 雲南省及び中国東部における植物と菌類の調査地の植生
- 「日本草本植物根系図説」補遺(9)
- 「日本草本植物根系図説」補遺(9)
- 富士山の帰化植物
- 高山植物の実生形態(2) : 草本植物生活史研究プロジェクト報告(2)
- 「日本草本植物根系図説」補遺(8)
- ナガバイワカガミ
- 高山植物の実生形態(1) : 草本植物生活史研究プロジェクト報告(1)
- 瀬戸内海地方を中心とした日本列島の帰化植物の分布概況(予報)
- 「日本草本植物根系図説」補遺(7)
- 「日本草本植物根系図説」補遺(6)
- 長野県植物誌(1997年12月)に発表された新学名
- 「日本草本植物根系図説」補遺(5)
- 「日本草本植物根系図説」補遺(3)
- 「日本草本植物根系図説」補遺(2)
- 「日本産植物根系図説」補遺(1)
- Contributions to the Flora of Southeast Asia II : Impatiens of Thailand and Malaya
- 北村先生を偲ぶ
- The Third International Conference on Preservation of Botanical Collections(第3回国際植物標本保蔵大会)の紹介
- ヨツバシオガマで示された葉緑体DNAの2系統間における生殖的隔離-山形県月山での解析-
- 葉緑体DNAによるシモツケソウ属 (バラ科) の分子系統
- 白山麓における高山植物の馴化試験 (特集・国立公園の管理を考える--レンジャーのいま)
- CD-ROM長野県植物誌資料集普及版(2005) 大量レコードの出版・頒布の一形態
- 長野県における普通植物の分布
- 新品種ヤエザキニッコウキバナシャクナゲ
- 里見さんを偲ぶ
- 長野県植物誌資料集CD-ROM(テスト版)について
- ツリフネソウ属植物Impatiensの分布に関する一ノート
- 4心皮性の子房をもつツリフネソウ属の植物について
- 植物分類学所感
- Impatiens siamensisについて
- 1982年度タイおよびマレーシア産植物の分類・進化学的研究調査の記録
- 日本産ツリガネニンジン属植物の研究 : II 染色体数概観と花粉粒の調査
- タイ国の高等植物における温帯要素の分類・地理学的研究(2)
- 1979年タイ国植物調査の記録
- タイ国産石灰岩植物の覚え書き, とくにホウセンカ属植物について : タイ国植物誌研究集会講演集録
- タイ国産ホウセンカ属植物追記
- シャクナゲの新雑種クロヒメシャクナゲ
- Impatiens ridleyi Hook. f.の染色体数
- 稀産植物の分布
- Impatiens chiangdaoensisの染色体数
- Contributions to the Flora of Southeast Asia I : Taxonomy and Phytogeography of Some Temperate Species in Thailand
- 東南アジアにおけるホウセンカ属植物の分類地理
- タイ国産新植物
- タイ国産ツリフネソウ属Impatiensの新種.その3
- タイ国産ツリフネソウ属(ツリフネソウ科)の新種2
- ナナカマド 七竈 (特集:高山・高原に生きる樹木たち)
- Naturalized Plants of Mt. Fuji, Central Japan (関東平野および後背山地を中心とする地域の自然史科学的総合研究(2))
- 南アルプス登山者の風景評価
- 新北限産地, 伊豆須崎のオキナワバライチゴ
- 中国地方西部および九州地方北部を中心とする地域の自然史科学的総合研究
- 中国地方西部および九州地方北部を中心とする地域の自然史科学的総合研究 : 実施の目的と平成8年度調査研究の成果
- 自然感をもたらす植生群 : 南アルプスの植生写真の提示結果
- 南アルプスにおいて自然らしさを感じさせた植生景観
- 地域水文情報データベースの構築に関する研究
- タイ国ドイ・インタノン山に於ける1998年の植物相調査
- 台湾産イボタノキ属Ligustrumの分類について
- 瀬戸内海地域における松林の衰退とそれによる植生の変化
- 最近発表した植物新名一括
- 台湾産カナメモチ属およびカマツカ属小記
- 熊本県南部における石灰岩地帯の植物 2
- 熊本県南部における石灰岩地帯の植物 1
- 日向の洞岳を訪ねて
- 船上山のイワギク
- 岩手懸下閉伊郡の石灰岩地帶より得た特記すべき植物 3
- 岩手縣下閉伊郡の石灰岩地帶より得た特記すべき植物 2
- 岩手縣下閉伊郡の石灰岩地帶より得た特記すべき植物 I
- 長野縣下伊那郡大鹿村蛇紋岩地の植生
- シチヘンゲの帰化記録
- 帰化植物マツバウンランの覚え書き
- 「日本草本植物根系図説」補遺 (9)