バブル経済崩壊後の家計行動 : 消費飽和説の検証を中心に
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概要
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1990年代の日本経済は,バブル経済崩壊後長期不況に陥っている.この不況の要因には諸説があるが,その一つには家計の消費支出減少が景気回復の桎梏となっているという消費不況説が存在する.現実に,この時期の家計行動の特徴としては,不況にもかかわらず貯蓄行動は活発であり,1998年までは上昇傾向(その後低下)を示す一方消費は確かに減少している.また,リストラによって失業率が上昇し,可処分所得は1998年まで微増しているが,消費支出が減少し消費の景気に対する平準化作用が機能していない.この消費支出減少の一要因として,消費飽和説が存在する.確かに,日本の継続的経済成長の要因として連続してリーディング産業が出現したことと,それに併せた消費需要が継続的に創出されたので,1990年代は消費飽和説が消費支出減少要因として出現したのであろう.しかし,1990年代の半ばからの金融機関破綻により,資金循環が効率的でなくなると企業倒産の不安もあり,そして年金制度の未整備と高齢化社会による老後の心配や,及びライフサイクル仮説に従えば生涯所得の減少などもあり,単純に消費支出減少を消費飽和説で片付けて良いものかどうか疑問である.よって,本論文は,1990年代における消費や貯蓄という家計行動の分析を行うことで,消費飽和説の有無を検証すると共に長期的視点に立った家計行動,換言するならば『将来に対する不安(将来におけるリストラ,老後の生活)』による家計行動の変化を検証する.結果としては,1990年代には消費飽和ではなく,将来に対する不安が大きくなり消費を減少させ,貯蓄を増加させたと考えられる.
- 2004-04-01
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