野菜作経営部門の判別関数による分析

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本稿では,最初に農業経営診断の必要性を指摘し,つぎにこれまでに役立てられてきた診断方法である直接比較法およびその改善方法を掲げ,その内容や留意点などを明らかにした.さらに,主目的である野菜作経営部門の診断に判別関数を応用する方法を明らかにした.最後に,判別分析による診断方法を現実のトマト部門経営に適用し,その有効性を検証した.その結果,判別分析は部門診断に有用な方法であることが確認された.今後は,この方法の有効性をさらに確かめるため,他地域,他機関に適用する必要があるが,実行にあたって,とくに留意しなければならない点を列挙し,むすびとする.(1)分類基準の明確化判別分析を適用するさい,あらかじめ農家を明確な分類基準に従ってグループ分けしなければならない.農業経営の場合,その基準がかなり曖昧になる可能性があるので注意を要する.本稿では,資料の収集上,部門純生産の平均値を用いて農家の分類を行ったが,分類基準にふさわしい指標があれば,それによるのが適切であると考える.(2)標本集団の範囲と大きさの決定分析を行うさい,標本集団の範囲と大きさの決定は,分析者の判断に委ねられることが多いが,それが判定結果を左右するおそれがある.従って,2群の集団の規定の仕方によって,基本統計量がいかに変化するかを吟味し,判別関数の安定性をチェックする必要があろう.(3)判別変数の選択重回帰分析においては,説明変数の数を必要以上にふやすと当該データへのあてはまりは向上するものの,予測能力は低下する.判別分析でも同様であり,不必要な変数を判別関数に含めると,推定するパラメータがふえるために,判別関数の予測能力すなわち判別力は低下する.このことから,判別分析に用いる変数はできるだけ少なく,しかも判別効率はできるだけ高いことが望ましい.(4)データの収集と異常値の検出この方法は,分析対象となる個別農業経営に関する多種類の診断指標が,できるだけ多くの農家について取り揃えられるという前提の下において有用なものとなる.つまり,調査対象農家に関するデータが入手不可能であるか,または少数の場合には適用されえないということである.また,経営診断は,入手した資料が不正確である場合には,有用な情報を獲得することができないばかりでなく,かえって誤った情報を得るという事態が生じかねないということである.個別経営に関する資料は,信頼性に欠ける場合があるので,異常値の検出を行うなど,できるだけ的確な情報を得るために努力する必要がある.なお,本稿の計算は,主として千葉大学総合情報処理センターのシステム(HITAC M-280H)を利用して,自身の開発したプログラムおよびセンター所蔵のプログラム・パッケージSPSSXにより行った.
千葉大学の論文

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