中央卸売市場会計の変動要因に関する一考察

概要

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本稿では,中央卸売市場会計の変動要因について計量的に分析を行った.中央卸売市場会計を論ずるにあたっては,その背景にある卸売市場の開設・維持の社会的意義について考慮する必要のあることは言うまでもない.しかし,ここでは,論点を明確にするため,中央卸売市場会計の企業会計的側面に力点をおき分析を試みた.その結果,以下のことが明らかとなった.市場会計にとって重要な収入項目である施設使用料は,総収入の増加に期待したほどの寄与はしておらず伸び悩みの状況にあり,このことが市場会計にとって,大きな問題点の一つとなっている.また,中央卸売市場は公営企業であるから,企業的側面と同時に公共的側面をも併せもつため,経営に伴う収入をもって充てることが適当でないか又は困難な経費は,一般会計からの繰入金によって補充されている.しかし,実際には現行の一般会計繰入れ基準が遵守されている市場,年度はきわめて少なく,これが問題となっている.さらに,支出面においては,ほとんどの卸売市場において建設改良費が増嵩しているが,それを賄うべく地方債等への依存度が強まっている.このことは,時間が経てばやがて地方債の元金償還や支払利息の増大となって発現し,これに関連して一般会計負担金が繰入れ基準をこえて膨張するという悪循環の原因となる.実際,中央卸売市場会計の現状をみると,繰入れ基準をこえて一般会計からの繰入金を受けながらも,なお収支再差引は赤字であるという状況がつづいている市場が多く,きわめて厳しい状況におかれている.しかし,その状況は市場によって一様ではない.それが端的に見られるのは市場の健全化の程度である.グループI(6大都市,昭和10年以前に開設)では,赤字基調が一貫して続いており,このままの状況が続けばますます累積赤字が増大するとみられる.このグループについては,今後いかに健全化するかということがきわめて重要な課題であり,何らかの抜本策を施す必要がある.これに対し,グループII(大都市,30-35年開設)では,これまでの分析により明らかなように,ある程度,健全経営が行われているということができるが,より一層,施設使用料の増大が望まれる.グループIII(中都市,45〜50年開設)では,収支再差引は,黒字,赤字の繰り返しで顕著な傾向はみられないものの,それが一般会計からの基準をこえる繰入れがあってのものであり,一層の健全化が望まれる.このグループも施設使用料の増加が不可欠の要件と考える.以上,中央卸売市場会計の現状について考察してきたが,同時にいくつかの問題点を摘出することができた.この問題点を解決するためには,施設使用料をいかに増大させるか,現在の市場の使用料等はこのままでよいのか,引き上げる必要はないのか,中央卸売市場のもつ公共的側面を考慮するとき一般会計からの繰入れ基準は現行のままでよいのかどうか,地方債の発行は現在のような状況でよいのか,国庫・都道府県補助金のあり方はどうか等を細かく検討していく必要があると思われる.これらの問題については,今後の課題としたい.なお,本稿の計算は,主として千葉大学総合情報処理センターのシステム(HITAC M-280 H)を利用して,自身の開発したプログラムおよびセンター所蔵のプログラム・パッケージ(SPSSX)により行った.
千葉大学の論文
1989-02-28

中央卸売市場会計の変動要因に関する一考察

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