アルファルファ草地の生産生態に関する研究
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概要
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1.個体密度を異にするアルファルファ草地の生育の様相を明らかにするため,品種Du Puitsを2,500個体/m^2,625個体/m^2,169個体/m^2,36個体/m^2の4段階の密度に栽値し,3年間にわたり,その生育・収量を比較した.2.播種当年の1番刈時までは,密度が高くなるにしたがい単位面積あたり乾物重も多かった.1番刈後もこの関係は継続するが,その差は刈取後の生育日数が経過するにともなって減少し,2番刈時には36個体/m^2区をのぞき,他の3区はほぼ等しい収量を示した.2年目,3年目において年間総収量は密度に関係なくほぼ一定し,したがって,単位面積あたり個体数の多いことは,本試験の密度範囲では播種当年にかぎって有利であるにすぎない.3.個体数の減少は,初期密度に関係し,3年経過後の生存率は2,500個体/m^2区-7%, 625個体/m^2区-20%, 169個体/m^2区-48%, 36個体/m^2区-83%で,初期密度が高いほど低かった.しかし,生存個体数はそれぞれ169, 125, 81, 30個体/m^2で,初期密度が高いほど多かった.4.各刈取時におけるlog.個体数-log.個体重の関係は,播種当年の2番刈以後は直線的関係を示し,回帰直線の傾き(C-D指数)はほぼ1であり,単位面積あたり収量が密度と無関係に一定となることを示した.5.アルファルファ草地は生育のごく初期をのぞき,つねに軽量の側に偏した個体重度数分布をもつ個体群によって構成されている.1.アルファルファ草地における収量-面横あたり個体数の関係を,より一層明らかにするため,特性を異にするMoapa, Rhizoma, Williamsburgの3品種を2,500個体/m^2, 625個体/m^2, 25個体/m^2の密度に栽植して,3年間にわたり生育・収量を比較した.2. 3年間の合計収量で,密度間には2,500個体/m^2>625個体/m^2>25個体/m^2の関係を得たが,この収量差は刈取初年目の1番刈の収量差にもとずくところが大きく,2年目の合計収量,3年目の1番刈収量では密度間に収量差は認められない.3. 3年間合計収量の品種の収量順位はWilliamsburg>Rhizoma>Moapaとみなされる.主効果の分散に比べてはるかに小さいが,密度と品種の間に交互作用が存在したことは,少くとも品種の収量順位が密度によって異なってくる可能性のあることを示唆する.4.個体の減少率は,どの品種でも初期密度が高いほど大きいが,試験終了時の生存個体数は2,500個体/m^2区,625個体/m^2区,25個体/m^2区の順に,Moapaは94, 79, 15個体/m^2, Rhizomaは103, 83, 18個体/m^2, Williamsburgは130, 99, 18個体/m^2と初期密度が高いものほど多かった.生存率が刈取条件に対する品種の反応の違いによって左右されていることが,個体数の減少経過からうかがわれた.5. 1茎重は,密度が高くなるにしたがって低下する傾向を示し,2,500個体/m^2区と625個体/m^2区との差は,刈取が進むにしたがって失われるが,この両者と25個体/m^2区との間にはかなり大きな差が認められた.6.アルファルファ草地の収量は,1m^2あたり15個体程度の少ない個体数でも,それ以上の個体数と変わらない収量を十分維持できる.1.品種(Du Puits, Moapa, Rambler),刈取回数(年間3回,4回,5回),施肥レベル(草地化成肥料<N-6, P_2O_5-11, K_2O-11>年間0kg, 50kg, 100kg/10a)がアルファルファ草地の収量と個体数におよぼす影響を,1967年から1970年の間,札幌市の沖積壌土の圃場で調査した.2.収量と面積あたり個体数に変動をもたらすのは,品種と刈取回数およびその両者の交互作用であって,施肥のレベルは本実験の範囲では影響をおよぼしていない.3. 4年間の合計収量でみると,Ramblerは刈取回数が増えるにしたがって収量が低下する.Du PuitsならびにMoapaでは,3回刈と4回刈の収量がほぼ同じであり,5回刈になると収量は低下するが,低下の割合はMoapaの方が小さい.品種の収量順位は3回刈でDu Puits>Moapa=Rambler,4回刈でDu Puits>Moapa>Rambler,5回刈ではDu Puits=Moapa>Ramblerであった.4.試験終了時の個体数は,Ramblerでは刈取回数が増えるにしたがって減少する.Du PuitsならびにMoapaでは,3回刈の個体数と4回刈の個体数がほぼ同じであり,5回刈になると減少するが,減少の割合はMoapaの方がはるかに小さい.品種の間には3回刈,4回刈でDu Puits=Moapa>Rambler,5回刈ではMoapa>Du Puits>Ramblerの関係があった.5.各年の合計収量とその年の最終刈取時の面積あたり個体数の間,4年間の合計収量と試験終了時の面積あたり個体数との間には,それぞれの品種の中でも,また3品種をこみにした場合でも相関関係が示されることが多い.しかし,このことから直ちに個体数の少ないことが収量の少ないことの直接的原因のように考えるのは誤まりであろうと考察した.1.アルファルファ草地を構成する個体の茎長,茎数,個体重の度数分布の歪みとその変化を二つの試験-1品種を4段階の密度(2,500個体/m^2, 625個体/m^2, 169個体/m^2, 36個体/m^2)で栽培し,生育・収量を比較した試験と3品種を3段階の密度(2,500個体/m^2, 625個体/m^2, 25個体/m^2)で栽培し,その生育・収量を比較した試験-の結果から考察した.2.茎長の度数分布は,いつの刈取でも,また,ほぼどの密度でも茎長の大きい方向に歪む傾向がある.しかし,歪みの程度は小さく,密度間の差異も比較的小さく,年次の経過にともなう変化も少ない.3.茎数の分布は,いつの刈取時でも,また,どの密度でも茎数の少ない方向へ歪み,その程度は密植ほど大きくなる傾向がある.年次の経過にともなう変化については,この二つの試験の結果だけからは推測できなかった。4.個体重の度数分布は,いつの刈取時でも,また,ほぼ,どの密度でも軽量の方向へ歪み,その程度は密植ほど大きい.年次の経過にともない,少なくとも標準播種量に近い密度(625個体/m^2),あるいは,それ以上の高い密度(2,500個体/m^2)では,ある時期に最大値を示した後は歪みの程度は軽減された.5.ある刈取時の個体重の度数分布の歪みの係数と,その次の刈取時までの個体数の減少率とは密接な関係を示したが,初期密度2,500個体/m^2のような密度の高い群落の初期に現れた多数の枯死個体は,歪みの程度と直接的な関係を示さなかった.1.第1章で記した栽植密度を異にする二つのアルファルファ草地(625個体/m^2, 169個体/m^2)の刈取初年目の1番刈時のデータから,それぞれ100個体を選出し,3年間の各刈取時におけるこれらの個体の茎長,茎数,刈取部乾物重の測定値から群落内の枯死個体について考察した.2.アルファルファ草地内の枯死個体の多くは,少なくとも,前回の刈取時において茎長,茎数,刈取部乾物重とも平均値以下の個体であり,とくに,乾物重では生存する個体の最小値に近い値を示す個体が多い.3.枯死する個体のうち,625個体/m^2区では,ほぼ70%, 169個体/m^2区では,ほぼ80%が前回の刈取時においてx^^--s値(乾物重の測定値を対数変換した後の平均値-標準偏差)以下の個体である.そして,枯死する個体は,枯死するまでの生育の経過によって,次の4つのタイプに分けることができる.I型;ある刈取まではx^^--sよりも大であって,x^^--sよりも小となった刈取の次回の刈取までに枯死するもの.II型;ある回の刈取まではx^^--sよりも大であって,x^^--sよりも小となった刈取後も何回かの刈取を経てから枯死するもの.III型;刈取初年目の第1回刈取時からx^^--sよりも小であって,やがてある時点で枯死するもの.IV型;x^^--sよりも大であるにもかかわらず,ある時点で枯死するもの.1.枠を連続して並べた模型的なアルファルファ群落をつくり,群落内の枯死する個体を詳しく観察するとともに,個体ごとの地下部炭水化物含有率を測定し,枯死する個体の貯蔵養分の状態を知ろうとした.2.枯死個体は,刈取回数の少なすぎる側と多すぎる側で増加する傾向が示された.3.刈取の行なわれた区の枯死個体は,刈取後再してこない再生不能個体であって,外部的に茎葉がうごき始めたという意味での再生を開始した後に枯死する個体は少ない.4.個体の地上部重と地下部炭水化物含有率の間には,地上部重がある程度の大きさ以上では,ほぼ一定の炭水化物含有率の水準を保つことができるが,それ以下では,地上部重の低下にともなって炭水化物含有率も急げきに低下するという関係が示された.5.群落内で枯死する個休の貯蔵炭水化物含有率は,刈取時において他の個体に比べて著しく低い水準にあったと推定された.また,無刈取の場合でも,枯死する個体の貯蔵炭水化物含有率は,他の個体に比べて,きわめて低い水準にあったといえる.
- 千葉大学の論文
- 1980-03-28
著者
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