特産地農業に関する研究 : VII. イチゴ生産における収益的作型組合せに関する研究 : 線型計画法の適用
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
第4報(中島,1967)に関連して,イチゴ生産における有利な作型組み合せに関する試算を,線型計画法を適用して試みた.イチゴ生産を経営に定着させるためには,生産規模を拡大し,その収益増加をはかることが不可欠の条件となる.生産規模拡大の制約因としては,採果期における労働供給量であることが経験的に知られている.したがって.単一の作型を採用するよりも,複数の作型を組み合せたほうが,労働配分の調整に役立ち,生産規模を拡大しやすい.そうすることはまた,出荷の早期化と長期化にも役立ち,結果的に収益が増加し,経営の安定化が実現されやすい.線型計画法の適用にあたっては,確たる基礎資料が必要である.そのため,事例農家を選定し,記録に基づく実態分析を行ない,係数決定に必要な資料を整えた.生産方式には,ハウス作・トンネル作・露地作の3作型を選定した.また,制限要素には採果期およびその他の農繁期労働量をとったため,多くの調整方式を採用した.線型計画法による試算結果は,次のようであった.1.基幹労働力2人の場合の理論解は,ハウス作が45%,トンネル作が36%,露地作が19%であり,その場合の利益総額は411,566円である.2.基幹労働力に2人の補助労働力を加えた場合の実際適用解は,ハウス作が600m,トンネル作が450m.露地作が200mの組み合せである.3.実際適用解の組み合せ比率は,ハウス作が48%,トンネル作が36%,露地作が16%であり,その利益総額は817,035円である.なお,試算結果について若干の考察を行なったが,要約すれば次のようである.1.生産規模の拡大にあたり,雇用労力の投入を必要とする場合には,雇用労賃と生産成果が示す家族労働報酬とを比較検討し,その経済的優劣判断のもとに実現する必要がある.2.うえの結果は,事例農家の分析資料をもとに試算したものである.したがって,普遍性を欠くことはいうまでもない.これを他経営に応用する場合には,各自の個人的事情を考慮しなければならない.3.試算結果に普遍性をもたせるには,解に若干の幅をもたせ,その目安をハウス作を45〜50%,トンネル作を35%,露地作を15〜20%とし,各自の個人的事情を勘案して決定することがのぞましい.
- 千葉大学の論文
- 1970-12-31
著者
関連論文
- 特産地農業に関する研究 : VI.一宮町におけるトマト生産の実態と主産地形成に関する経営的考察 : 千葉県一宮町における調査
- 特産地農業に関する研究 : 第2報 柏市とまと産地の実態分析
- 特産地農業に関する研究 : 第1報 特産地形成の要因および発達過程の分析
- 技術改善に関する試論
- 特産地農業に関する研究 : VII. イチゴ生産における収益的作型組合せに関する研究 : 線型計画法の適用
- 特産地農業に関する研究 : V.九十九里町における露地メロン生産の実態と主産地形成に関する経営的考察 : 千葉県九十九里町における調査
- 特産地農業に関する研究 : IV.関東におけるイチゴ生産の実態と主産地形成に関する経営的考察
- 特産地農業に関する研究 : III.東金市トマト産地の実態分析
- 都市近郊水田地帯における経営改善の試論 : 埼玉県三郷町茂田井部落の事例
- 東京都下における花卉を中心とした農家経営の実態分析と批判 : 温室カーネーション中心の農家経営事例