血圧と疾病入院発生状況の検討(第2報)
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概要
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【目的】疾病入院ないしは疾病入院特約のついた生命保険契約は,発売開始以来12年を経過し広く一般に普及するようになった。今日では,各種の欠陥において死亡指数と入院指数の評価を同一に評価すべきか否かが問題になってきた。最近,各種欠陥の疾病入院発生率に与える影響が注目され,著者らも昨年の本学会において血圧と疾病入院発生状況に関する報告を行った。今回は,収縮期血圧(SBP)と拡張期血圧(DBP)が疾病入院発生率に及ぼす影響と,同一血圧値区分における疾病死亡指数(MR)と疾病入院指数(HR)との関係を検討した。【対象・方法】対象は,1972〜82年の11年間に当社の生命保険に加入した,報状扱い,契約年齢15歳以上の男性経過契約で疾病入院については743万件,疾病死亡については1,054万件である。体格欠陥及び血圧欠陥以外の欠陥を有する契約は除外した。観察年度は1972〜82年で,加入時の血圧値別に,HR, MR,入院原因を調査した。HR,入院原因の標準には,高血圧を有しない同一観察期間内の当社男性標準体契約1,270万件の統計を用い,MRの標準には同じく1,776万件の統計を用いた。統計学的解析は,HRについてはχ^2-検定,SBP, DBPとHR, MRとの関係は重回帰分析を用いた。【結果】疾病による入院件数と入院率は,14.6万件,19.70‰であり,疾病による死亡件数は,19,523件,1.85‰であった。HRは,血圧の高い群で有意に高かった。特に,心疾患,高血圧性疾患,脳血管疾患,腎炎・ネフローゼ症候群では,その傾向が顕著であった。SBPとDBPとの間には,有意な正相関(R=0.6734, P<0.005)があったが,DBPとHRの相関は有意ではなかった(R=0.1573)。SBP, DBPとHRの間には,HR=0.8183(SBP)+0.3047(DBP)-21.1567なる重回帰式が得られ,重相関係数はRR=0.6908 (P<0.001)であった。心疾患,高血圧性疾患,脳血管疾患の入院指数は,血圧の上昇と共に指数関数的に上昇した。そこで,3疾患の入院指数の常用対数(Log10HR)とSBP, DBPとを重回帰分析にかけたところ,何れの年齢階級においても,SBPの偏回帰係数がDBPのそれより高かった。3疾患とも,各年齢において有意な重相関係数が得られた。特に,高血圧性疾患,脳血管疾患では,RR=0.8〜0.95という高い値を示した。年齢階級別,収縮期血圧別に分けた観察入院数および死亡数が10件以上の70群のHRとMRとの関係を検討したところ,相関係数はR=0.8254, P<0.005で有意であり,MR=3.296(HR)-223.16なる回帰式が得られた。各年齢別では,30〜59歳の各階級で有意な正相関があった。回帰係数は,年齢が高くなるほど小さくなる傾向がみられた。【考察】HRとSBP, DBPの重回帰分析の結果,偏回帰係数は,SBPがDBPより大であり,SBP 160mmHg, DBP 100mmHg程度までの標準体と軽度高血圧欠陥体では,HRに対してSBPの影響が大きいと考えられた。循環器疾患のHRは,SBP, DBPと線形ではなく,指数関数の関係にあり,Log10HRと高い相関を示した。また,30歳以上の各年齢で,Log10HRに対してHRと同様,SBPの影響が大きいことが示唆された。入院指数は死亡指数と高い相関を有するが,血圧値の上昇に対する入院指数の上昇率は,死亡指数の上昇率に比較して1/4〜1/3程度であることが示唆された。血圧欠陥に関しては,入院指数を死亡指数と同等に評価するときは,入院指数を過大に評価する危険があると考えられた。
- 日本保険医学会の論文
- 1988-01-20
著者
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