亜硫酸塩および関連物質がミトコンドリアの機能におよぼす作用の研究 : 〔I〕ラット肝ミトコンドリアの呼吸および酸化的リン酸化反応に対する亜硫酸塩,亜セレン酸塩,亜テルル酸塩の阻害作用
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概要
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グルタミン酸を基質として,ラット肝ミトコンドリアにおける酸化およびリン酸化反応におよぼす亜硫酸塩,亜セレン酸塩,亜テルル酸塩の作用を検討した。1)ミトコンドリアの促進呼吸(state3呼吸)は高濃度の亜硫酸塩,亜セレン酸塩および亜テルル酸塩によって阻害された。2)抑制呼吸(state4呼吸)は,低濃度の亜セレン酸塩と亜テルル酸塩によって最高1.7〜2.0倍程度に増大した。しかし高濃度のこれらの塩によっては強く阻害された。亜硫酸塩が抑制呼吸におよぼす作用は,亜硫酸自体がミトコンドリアの亜硫酸酸化酵素系によって酸化されるために解析することはやや困難であった。3)同様な促進呼吸の阻害と抑制呼吸の増大が,コハク酸を基質とした時にも観察された。4)これら3種の塩は低濃度で呼吸調節率(促進呼吸/抑制呼吸)を低下させた。5)3種の塩は低濃度ではミトコンドリアの正味のATP産生に殆ど影響を与えなかったが,高濃度では軽度の抑制を示し,また僅かにATPの水解を起こす傾向を示した。6)脱共役剤,2,4-ジニトロフェノールを低濃度に添加すると促進呼吸はあまり影響されず,抑制呼吸を著明(1.6〜2.0倍)に増大させた。したがって呼吸調節率が低下した。また低濃度の2,4-ジニトロフェノールの添加ではATPの産生量やATPの水解活性に対する影響はないか,もしあっても僅かであった。7)これらの結果から,in vitroでミトコンドリアに添加した亜硫酸塩,亜セレン酸塩および亜テルル酸塩は,高濃度(5×10^<-4>M以上)では呼吸基質の酸化の阻害剤として作用し,低濃度(10^<-5>〜10^<-4M)では脱共役剤として作用すると推定される。
- 北里大学の論文
- 1985-02-28
著者
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