高齢者の地域支援サービスの利用実態に関する研究 : 鶴ヶ島市の事例を中心に
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概要
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結果と考察を述べてきたが, まとめると以下のようになる。(1) サービスを利用している人は37名, 一度も利用したことのない人は5名, この中で, 情報がなく利用経験がない人は2名であった。この2名の事例は, やがて地域から孤立し, 孤独や閉じこもり, 生命の安全が脅かされるという危険性を孕むものである。したがって, まず, 情報が行き渡るようなシステム, 在宅介護支援センターを中心とした地域支援ネットワークづくりが重要である。(2) サービス利用に関する情報は, 日常生活に関するサービスでは, 市役所など行政側からのアプローチによって得ており, 介護予防, 生きがいのサービスに関する情報は, 単独, 夫婦のみ世帯ともに, 地域の交流から情報を得ている人が多かった。また, 広報や回覧などの文書からも情報を得ており, これらが重要な情報源であることが示された。(3) 生活支援のためのサービスでは, 利用者のニーズにあわせたサービスを提供してくれることが満足感を高めていたが, 一方で, 他人に甘えたくないという心理的抑制が働いていること, 内容をよく知らないために利用に抵抗感があることがあげられた。(4) 介護予防, 生きがいのためのサービスでは, 利用している要因として, そのサービスが近くにあるといった「距離」, 「内容」, 「地域の交流」があげられた。しかし, 利用していない人からは, 遠すぎるという「距離」世代の違い」「趣味や内容の違い」「地元住民と新住民との価値観の違い」などがあげられていた。(5) サービスに対する要求や希望についてはわからないと答えた人が最も多かったが, この世代の人々にとって, 後期高齢者となることが想像できないという背景があること, 現在あるサービス内容も周知されていないことなどが, わからないという現実を強化しているものと推測された。(6) 45人の本調査を通じて, 鶴ヶ島市の単独世帯, 夫婦のみ世帯の高齢者に最も共通した印象は, 彼らが孤独であるということであった。話し相手ではなく, 話を聞いてくれる人がほしいといった切実な願いが彼らにあり, 話を聞いてくれる人の有無がその人の主観的幸福感を左右しているということがみてとれた。したがって, 高齢者福祉の重要なポイントの1つは, このような彼らの孤独感をどのように解決していくかという点にあり, 「個」を視点としたきめ細やかな支援が望まれる。
- 2004-12-01
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