肝臓特異的 3-phosphoiositide-dependent protein kinase1 (PDK1) 欠損マウスの作成とその糖代謝異常の解析
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概要
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3-phosphoinositide-dependent protein kinase 1 (POK1) は phospatydilinositol 3-kinase (PI3-K) 依存性に活性化される蛋白リン酸化酵素であり, インスリン作用のエフェクター分子であるAkt, p70S6キナーゼ, atypical PKCs などの蛋白リン酸化酵素の活性化に関与することが示唆されている。本研究では, Cre-loxpシステムを用いて肝臓特異的にPDK1遺伝子を欠損するマウス (L-PDK1KO) を作成し, インスリン作用のエフェクター分子の活性化や糖尿代謝恒常性維持機構におけるPDK1の生理的意義を解析した。L-PDK1KOの肝臓におけるPDK1蛋白の発現量は対照の5%以下に減少していた。随時接食時の肝臓重量が対照に比し20%程度減少しており, グリコーゲン蓄積の低下がおそらくその原因と考えられた。L-PDK1KOの肝臓ではインスリン依存性のAktの308位のリン酸化は著しく低下していたが, 473位のリン酸化には影響がなかった。L-PDK1KOにおいて空腹時, 随時接食時の血糖及び血漿インスリン値は上昇しており, 糖負荷試験時の血糖上昇反応も増強していた。一方, 外来インスリンに対する血糖降下反応は低下していた。以上の結果から, PDK1は生体においてもAktの活性化に必須の分子であるとともに, 糖代謝恒常性の維持に重要な機能を果たすことが明らかとなった。
- 2003-03-31