麻疹ウイルス野生株のP遺伝子およびP蛋白の解析
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概要
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我々は我国の麻疹ウイルス野生株についてH蛋白の移動度とH, MおよびNP遺伝子の塩基配列より2つの型が存在することを報告してきた。今回P遺伝子の塩基配列およびP蛋白の電気泳動移動度についても検討を行い, 2つの型間で明瞭な違いがみられることがわかった。P蛋白の電気泳動を行うと1型株は65kDの位置にP蛋白がみられ, 2型株では68kDの位置にP蛋白がみられた。1型株内では1ケ所の塩基配列に差異があり, 2型株内では3ケ所の塩基配列に差異がみられた。推定アミノ酸では, 前者に1ケ所, 後者に3ケ所の差異があった。一方, 型間で22ケ所の塩基配列に違いがあり推定アミノ酸には9ケ所の差異がみられた。P蛋白経時的変化では1型株感染細胞で感染初期に65kDの位置にP蛋白を認め, 感染後期に70kDの位置にもP蛋白がみられた。2型株感染細胞では感染初期に68kDの位置にP蛋白を認め, 感染後期に70kDの位置にもP蛋白がみられた。ところがP蛋白単独発現では1型株, 2型株とも時間経過に関わらず, 各々66kDと70kDを呈した。P蛋白のリン酸化の程度を調べると, 1型株の電気泳動移動度の違いP蛋白が蛋白量に比し著明にリン酸の集積をみた。脱リン酸化処理することによって, 1型株P蛋白は65kD, 2型株P蛋白は68kDの分子量近傍に抑えられ, P蛋白のリン酸化が, P蛋白分子量の経時的変化に大きく関わっていることが示唆された。
- 2000-03-31