バセドウ病における甲状腺刺激抗体のエピトープとその多様性の検討 : TSHレセプター/LH-CGレセプターキメラを用いた解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
バセドウ病の病因である血中IgG分画中の甲状腺刺激抗体(TSAb)は甲状腺刺激ホルモン(TSH)レセプターに結合してその作用を発現するので,その作用機序を解明する第一段階として,TSAbのTSHレセプター上の結合部位とその多様性を検討した。田原らにより作成されたwild typeヒトTSHレセプターおよびTSHレセプター機能(TSH結合能とTSH刺激時のcAMP産生能)を有する4種類のヒトTSHレセプター/ラットLH-CGレセプターキメラ(Mc1+2, Mc 2, Mc 2+4, Mc 4)をCos7細胞に発現させ,TSHレセプター抗体活性が陽性(血清中TBII活性60%以上)である57例のバセドウ病IgGで各キメラレセプターを刺激した際のcAMP産生量を測定し,健常人プールIgG存在下のcAMP産生量に対する百分率として刺激抗体活性(TSAb活性)を算出した。その結果,wild typeおよびTSHレセプター細胞外ドメインのセグメント4(アミノ酸残基261-370)を相同なLH-CGレセプターのセグメントで置換したキメラMc 4では全例でTSAb活性が陽性であり,セグメント4はTSAbのエピトープではないことが確認された。セグメント2(アミノ酸残基90-165)をLH-CGレセプターに置換したキメラMc 2では57例中53例でTSAb活性が消失した(Type I-TSAb)。したがって,大多数のバセドウ病のTSAbは細胞外ドメインのセグメント2にあるエピトープを認識している可能性が高いと考えられた。一方,キメラMc 2でTSAb活性を認めたのは57例中4例で,うち2例(Type II-TSAb)のIgGはセグメント1+2(アミノ酸残基21-165)をLH-CGレセプターに置換したキメラMc 1+2でTSAb活性が完全に消失した。すなわち,これらの患者のTSAbは細胞外ドメインのセグメント1(アミノ酸残基21-89)にあるエピトープを認識していると考えられた、残りの2例(Type III-TS-Ab)はキメラMc 1+2でのTSAb活性がwild type でのTSAb活性に比べて有意に低下していたが,依然として陽性であった。したがってTypeIIIのTSAbの認識するエピトープの一部はセグメント1にあるが,セグメント1,2,4以外のセグメント3(アミノ酸残基166-260),セグメント5(アミノ酸残基371-415),あるいは細胞膜貫通部位のいずれかにも重要なエピトープがあると考えられた。以上の結果よりバセドウ病のTSAbは患者によりTSHレセプター上の異なるエピトープを認識しており,多様性のあることが初めて明らかにされた。
- 千葉大学の論文
- 1994-12-01
著者
関連論文
- 19. CSIIによる糖尿病妊婦の管理(第774回 千葉医学会例会・第二内科例会)
- バセドウ病における甲状腺刺激抗体のエピトープとその多様性の検討 : TSHレセプター/LH-CGレセプターキメラを用いた解析