抗膵島抗体(ICA)の多様性に関する免疫組織学的検討
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概要
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糖尿病患者の血清中に認められる抗膵島抗体(ICA)については,未だ明らかでない部分が多く,その認識抗原も,未だ明確に決定されていない。化学的に抗原系を修飾したヒト並びに齧歯類膵組織を用いて,IDDM患者の血清ICA の性状を免疫組織学的に検討した。すなわち,膵組織を,(1) periodate,(2) borohydride,(3) neuraminidase,(4)methanol, (5) chloroform-methanol, (6) acetone, (7) protease の各試薬で処理し,ICA陽性血清と反応させ,間接蛍光抗体法で染色した。その結果,ICA の認識抗原には,糖脂質上のシアル酸残基と蛋白との少なくとも二種類が存在することが示唆された。後者の抗原を認識するICA は,前者を認識するICA と比べて罹病期間の長い患者に認められる傾向にあった。また,異種膵組織との種交叉性の検討より,前者の型のICA には,ヒト膵島とラット膵島との共通抗原を認識するものと,ヒトにのみ存在し,ラットには存在しない抗原を認識するものとの少なくとも二種類の亜種が存在する可能性が示唆された。この様に,ICAは膵島内の様々な抗原に対して産生されるポリクローナルなものと考えられ,様々な性質を持つ多様なICAが存在する可能性がうかがわれた。
- 神戸大学の論文