24時間制を生む細胞内シグナリング : 時間医療の基礎として
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
現代の「24時間社会」において,ヒトはリズム障害・睡眠障害・時差症候群などを起因とする様々な健康上のトラブルに巻き込まれている。したがって,生命現象を24時間という単位で捉え直した「24時間制の生命科学」を基盤とした「時間医療」の視点からは医療を捉え直すことが重要になってきている。体内時計は,細胞1個のレベルで発現する「細胞時計」で,中枢時計のみならず全身のあらゆる細胞が「末梢時計」を発現することが最近分かってきており,哺乳類において体内時計のリズム発振に関わる一連の時計遺伝子と呼ばれる転写因子(時計蛋白質)をコードする遺伝子群の発見を契機に,その分子的基盤が明らかになったことから急激な進展がみられた。時計遺伝子は,DNA修復に関わる細胞内シグナリングシステムの時間依存的制御によって,発癌抑制に直接関わっている可能性が示唆されている。マウスでみつかった時計遺伝子の多型解析を,ヒトの概日リズム障害について適用しようという試みもいくつか成果を上げている。体内時計によって時間的な発現パターンをコントロールされる遺伝子を転写制御レベルで包括的に捉え,概日システムを理解しようとするDNAマイクロアレイによる解析も進んでいる。さらに,細胞内の機能系を時間レベルで統合する細胞内シグナリングシステムの蛋白質制御レベルでの解析が次のステップとして重要だと考えられ,われわれは時間シグナリングにおける統合的な役割を担う周期変動性キナーゼPFKを介する細胞内シグナリングの解析を進めている。
- 東邦大学の論文
- 2004-05-01
著者
関連論文
- 7. 中枢体内時計モデル細胞を用いた時刻依存性細胞内シグナリング機構の研究(B. 平成15年度プロジェクト研究報告,第125回 東邦医学会例会)
- 7. 中枢体内時計の細胞内シグナリング系を標的にしたリズム障害治療の基礎研究(B. 平成14年度プロジェクト研究報告,第123回 東邦医学会例会)
- 24時間制を生む細胞内シグナリング : 時間医療の基礎として
- 24時間制を生む蛋白質制御メカニズムの研究
- 哺乳類中枢時計の光同調における蛋白質レベルでの制御メカニズム