成熟哺乳動物網膜の神経突起再生と神経栄養因子
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概要
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近年,神経の分化や生存維持などにかかわる種々の因子が同定され,そのなかで特に神経栄養因子と呼ばれる一群の物質が様々な効果を神経に及ぼしていることがわかってきた.私達は視神経の再生を目標としてその一助となる薬剤の評価をするための実験系を組み立て,神経栄養因子の評価を行った.成熟ラットの網膜を用い,コラーゲンゲル中で網膜神経節細胞の組織培養を行った.培養液は無血清培養液を用い,その中に各種神経栄養因子nerve growth factor(NGF),brain-derived neurotrophic factor(BDNF),neurotrophin-3(NT-3),neurotrophin-4(NT-4)およびciliary neurotrophic factor(CNTF)を添加した.その後,再生してくる網膜神経節細胞の神経突起数を経時的に計測,比較することにより,各神経栄養因子が網膜神経節細胞の神経突起再生に与える効果を評価した.その結果,培養2日目から単離した網膜神経節細胞より再生神経突起が伸長するのが観察された.免疫組織染色によりこれらは中枢神経である網膜神経節細胞の再生神経突起であることがわかった.この再生神経突起の本数を比較したところ,BDNFおよびNT-4添加培養液では培養期間を通して神経突起の再生促進効果がみられた.NGF添加培養液では,培養早期には促進効果がみられたが,徐々にその効果は減弱した.NT-3およびCNTF添加培養液では,神経突起再生促進効果はみられなかった.BDNFを培養初期に投与したものと培養中期以降に投与したものを比較検討したところBDNFは培養初期に投与された時に神経突起再生促進効果が比較的大きいことが示唆された.
- 横浜市立大学の論文
- 2005-03-31
著者
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