組み換えアデノウイルスベクターによるヒト単球由来樹状細胞へのHPV18E7抗原遺伝子の導入 : 癌ワクチンへの応用にむけて
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概要
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癌治療のひとつの選択肢として,生体の免疫応答の中心的役割を果たす樹状細胞(dendritic cell:DC)を用いた癌ワクチン療法が研究されてきた.癌抗原を遺伝子導入されたDCは,長期間にわたり細胞内で抗原タンパク質を発現し,抗原提示することでナイーブT細胞を活性化し,細胞傷害性T細胞を誘導することが可能と考えられている.アデノウイルスベクターは,多種多様な標的細胞へ遺伝子を導入する事ができるベクターとして使用されてきた.ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頚癌を誘発するウイルスであり,その癌抗原のひとつとしてHPV18E7型が知られている.本研突では,HPV18E7遺伝子を,アデノウイルスベクターを用いてヒトDCへ導入発現させ,DCの免疫学的特性を調べた.その結果,1)アデノウイルスベクターは効率良くDCへ目的遺伝子を導入でき,2)HPV18E7遺伝子導入後,DCの成熟化が,共刺激分子や成熟マーカー発現の上昇,およびIL-12p70の産生により確認され,3)リンパ球活性化能がIFN-γ産生により確認された.この事から,持続的な抗原発現を目的とするDCへの癌抗原遺伝子導入方法として,アデノウイルスベクターを用いる方法が有効である事が示唆された.また遺伝子導入後に見られたDCの成熟化やリンパ球の活性化は,腫瘍特異的免疫応答を誘導できる可能性を示すものであった.
- 横浜市立大学の論文
- 2005-01-31