景気循環の計量分析(下澤洋一先生追悼号)
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概要
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本稿は1970年代後半からこれまでの景気循環の特徴を分析したものである。特に景気転換点を中心にその景気変動要因を価格要因と数量要因に分けて計量的に分析した。またこの要因を明瞭にするために景気変動のメカニズムを民間企業設備投資と営業利益率の関係をもとに計量モデルを利用して分析を試みた。分析結果は数量要因としては景気転換点で公共投資,輸出,政府消費,在庫投資,住宅投資,雇用量(労働コストの要因)が作用しており,価格要因として輸入価格,輸出価格,賃金率(労働コストの要因)が作用している。その他に過剰投資,管理費抑制,リストラ要因が作用しているが,これらは効率化要因として別に分類できる。この場合,過剰投資などは非効率化要因(マイナスの効率化要因)となる。特に近年の不況がデフレと呼ばれるが卸売物価はあまり利益率には作用せず景気循環の重要な要因とは認められなかった。しかしこの景気循環の分析期間を通して輸入価格の変動がしばしば重要な要因と認められた。景気変動の山と谷における転換点の要因として輸入価格の動きがこの分析期間の共通要因として見ることができるようである。そしてこの輸入価格と為替レートの密接な関係から景気に対し循環的な変動を起こす可能性が考えられ,特に90年代の景気変動においてはそのような関係を見ることができる。バブル崩壊以後の景気循環の特徴は景気の上昇持続力が弱いことである。基本的に景気の上昇持続力は民間設備投資と営業利益率の相互作用がプラスに働くことであるが,この相互作用が阻害されるのは単なるデフレだけではなく,産業連関表にも認められる製造業の大きな空洞化によるものと考えられ,生産性,雇用・所得・支出のマクロ的メカニズムとともに構造的要因にもとづくものである。
- 2004-03-31
著者
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