緩徐な腫瘍内出血の増大を示した転移性脳腫瘍の1例

概要

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要約:腫瘍内出血の原因の約半数は転移性脳腫瘍で,多くは脳卒中様に発症する。今回,腫瘍内出血が緩徐に増大した転移性脳腫瘍の1例を経験したので報告する。症例は50歳男性。胸痛,血痰とともに,右口角から流涎があったが放置。2カ月後,胸部X線上右肺の異常陰影を指摘され,擦過細胞診にて肺腺癌と診断された。頭部CT上,多発性脳腫瘍を認め,左前頭側頭葉の腫瘍は直径約2cmで腫瘍内に軽度の出血をきたしていた。全脳照射(2Gy/day)を開始したが,失語・右不全麻痺が悪化し,入院19日後に意識レベルが低下した。CT上,腫瘍内出血増大を認め,緊急腫瘍摘出術を行った。嚢胞性腫瘍内血腫は,赤から暗赤色を呈し,漿液性と粘稠性の成分が混在していた。本症例の腫瘍内出血が緩徐に増大した機序として,腫瘍壁から微小出血が繰り返し起こったこと,および腫瘍壁が被膜様に作用し血腫吸収を妨げたことを推測した。本例のごとく,肺腺癌の嚢胞性転移性腫瘍では,腫瘍内出血の緩徐な増大にて,神経症状が進行性に悪化することがあり,慎重な経過観察が必要である。
東邦大学の論文
2005-01-01