「語らへばなぐさむこともあるものを」 : 和泉式部の表現(II.人文・社会科学系)
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概要
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本稿では、「語らふ」という歌ことばを糸口にして、和泉式部の表現と発想の一端を明らかにすることを試みる。和泉式部は「語らふ」ということばを愛用する。しかも同時代の他の歌人たちとはちがって正述心緒的な歌の中にこのことばを用いている。ことに特徴的な表現の一つに、「語らふ」ことによって「なぐさむ」という歌がある。こうした表現・発想の歌は他の平安歌人にはほとんど見られず、万葉歌の影響を受けたものとおぼしいが、同時に和泉式部にとって非常になじみ深い大切なものであったようである。和泉は、恋人、同性や異性の友人、どこかにいる心通じあう誰かと語り合い、親密な共感関係を結ぶことを願い求める歌を、くりかえし詠む。このような歌が生まれる背景には、彼女の心につねにあった、生きることそのものの根源的な寂しさが横たわっているように思われる。言い換えれば、和泉式部のこれらの歌には「寂しさや欠落感に言及して、そこから愛を求めることばを導きだす」という発想パターンが見られるのである。
- 千葉大学の論文
- 2004-02-28
著者
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