Vocabulary研究 : 認知言語学の導入(100周年記念号)
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概要
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本稿は言語学の語彙研究成果を概観し、認知言語学が英語教育に与える影響について考察するものである。語彙習得の問題は、外国語を学習する上で避けて通ることができない。この問題に対し、伝統的な言語学はその下位部門である形態論と語彙意味論の研究成果を効果的に利用することを示唆してきた。形態論は語の内部構造と語形式の過程を記述し、語彙意味論は特定の語が感覚関係で他の語とともに意味のネットワークを形成しているということを例証している。加えて、我々は言語使用者である人間の存在を忘れてはならない。外界に対して、主体的に「意味づけの営み」を行う人間の生得的な特性は、言語の本質に大きな影響を及ぼしているはずだからである。言語とは、人間の身体的特性とともに、概念・思考・行動と密接な間係にあり、教室で伝えられている無機質な「科目」よりずっとダイナミックな性質のものなのである。認知言語学は、人間の認知活動に言語の本質を求めるパラダイムとして注目されている。これまで教室で教えられてきたことに対し、認知言語学なら理由を与えることができるであろう。言語の本質に迫る過程において、その使用者たる人間の主体性を認めることこそ、言語学が学問体系に確固たる地位を得る方法であると信じる。語学教育の現場で、教員は「言語の知識」を通じて学習者にさまざまなことを伝えている。その際、日常的に関わりを余儀なくされる周辺的な要因によって、しばしば本質的なことを見落とすことがある。つまり、「何を、いつまでに教えるのか」にとらわれ、「どのようにその知識を伝えるのか」を軽視してしまうのである。また、カリキュラムの関係上、別々な能力として開発されているものを統合する機会がもてない状況にある。そうした中にあっても、学習者に言語に関する知識をより広く伝えるために、より効果的な指導方法が求められている。そして、それは理論に裏打ちされた、体系だったプログラムのもとで実践されるべき授業であると考える。
- 2003-10-01
著者
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