重度記憶障害を伴う高齢者の介護支援方策について
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概要
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老年期にある高齢者の重度記憶障害についての若干の検討と考察を試みた。特に認知症(痴呆)による知能障害と記憶障害についての脳病理学的、神経心理学的、認知心理学的解明を試みながら、福祉臨床における介護支援の諸方策について検討した。加齢にともなう高齢者の認知機能の低下は、われわれ人間にとっては避けがたい生物学的、神経心理学的現象と言えるが、長年にわたって培われた知識・技能が容易に失われないこともまた事実である。認知症の中核症状に記憶機能と認知機能障害が考えられている。記憶能力の低下は知覚、学習、思考、コミュニケーション行動に直接的な影響を及ぼすが、そのための介護福祉的支援方策について考察し、若干の提案を試みようとした。急性、亜急性に発症する認知症は医療の対象となるが、一般的な老化による記憶機能と認知過程の障害は、徐々に部分的に出現し次第に憎悪する傾向がみられる。そのあらわれ方には個人差があり、個々人の人生努力と密接である。個人の自助努力は言うに及ばず、また家族、地域による福祉支援課題として、その対応方策が考慮されねばならない。軽度の認知症が疑われるレベルでは、幼少期から十分習慣化した運動や身体作業、ADLに支障があらわれ、日常生活や社会行動面において部分的な不具合や不都合が生じるようになる。さらに、中・重度の認知症になると見当識などの認知機能のみならずADL、APDLにも重い障害があらわれてくるが、著しい言語・記憶障害を示す認知症への対応には、医療、理学療法、作業療法、言語療法のほかにも、福祉的環境調整ときめの細かいケアプランとケアワーク、それに生活療法的、行動療法的、芸術療法的支援、非言語的意思伝達などの諸方策が必要となる。高齢認知症者の抱える個人的問題に関しては、身体的側面のみならず精神的側面と、家庭・社会関係の再体制化への配慮が求められる。なかでも家族福祉支援が重要である。そのための医療・福祉支援は必須のものとなる。問題の解決には高齢認知症者のQOLと高齢者をとりまく社会・文化的環境についての配慮も欠くことはできない。
- 2005-03-01
論文 | ランダム
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