遺伝子配置に基づいた環状2本鎖ゲノム間距離の推定法の開発
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概要
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葉緑体などの環状2本鎖ゲノムにおける遺伝子配置に基づくゲノム間の距離を計算する方法の開発を行った。本研究では従来法の共通領域に対するinversionに加えて,transpositionおよびinverted transpositionによる変化,遺伝子の挿入・欠失,さらに移動する遺伝子領域の塩基数による重み付けを考慮した。この計算法を評価するために全塩基配列が決定されている16種の葉緑体ゲノムを用いてゲノム間の距離を算出した。その結果,RhodophytaとEuglenophyta, ChlorophytaおよびStreptophytaに分類される生物との間の距離が最も離れた。HeterokontophytaはややRhodophytaに近い傾向を示し,またEuglena gracilisはChlorophytaに近く,これらの結果はHeterokontophytaがRhodophytaに属する藻類から,E. gracilisの葉緑体はChlorophytaに属する藻類からそれぞれ二次共生で葉緑体を獲得したという説に沿うものであり,系統関係をよく再現することができた。これに対して,共通に存在している遺伝子を用いて,inversionのみを考慮した従来法の場合,E. gracilisが他の生物から最も遠いという結果になり,またこのゲノム間距離を基に系統樹を作成した場合,陸上植物内においてBryophyaやPteridophytaよりもMagnoliophytaに属するOryza sativaが早く分岐しており,これまでに明らかにされてきた系統関係をうまく再現することはできなかった。さらに共通領域におけるin-version, transposition, inverted transpositionに基づいたゲノム間距離においても,系統関係をきちんと反映する結果にはならなかったことを考慮すると,Rhodophyta, Heterokontophyta, Chlorophyta,陸上植物といった広範囲にわたる植物由来の葉緑体の系統関係をゲノム上の遺伝子配置に基づいて考える場合には,全てのゲノムに共通に存在する遺伝子だけではなく,非共通遺伝子も共に取り扱わなくてはならないことが明らかになった。
- 明治大学の論文
- 2004-09-25
著者
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