沖縄県人に対するイメージの特性と構造(沖縄大学創立20周年記念号)
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概要
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本研究では沖縄県人に対するイメージの特徴と構造を捉えるためにSD法によるイメージ調査結果が報告された。本調査は全国の大学1年生1028人を対象として8大学で実施された。SD法の調査結果は主因子解によって処理され、ヴァリマックス回転が施された。その結果を基にして、全国の被調査者や沖縄県出身者、沖縄県居住者等のグループ間比較をし、また、沖縄の類似県としての鹿児島県や宮城県の人々に対するイメージ調査結果との比較をも行ないながら分析が進められた。本調査研究において得られた結果を要約すると主として次の通りになる。(1)沖縄県人に対するイメージの構成因子として、全体的(Go)には、(a)親近性因子、(b)タフネス因子、(c)明朗性因子、(d)近代性因子等の4因子が抽出された。(2)沖縄県出身者群と沖縄県居住者群を対象とした群別の因子負荷量の算出の結果は、とりわけ、親近性と温情性に関する項目が、前者においては同一因子(第1因子)を構成するものとして抽出され、また、後者においては親近性と温情性は相互に独立したもの(第1因子と第3因子)として抽出された。(3)沖縄県人に対する沖縄県出身者のイメージの特徴として、第1因子の親近性と第3因子の明朗性の面では他の県人よりも比較的高い評価を示し、逆に、第2因子のタフネスや第4因子の近代性の面では低い評価を示している。(4)全国群や沖縄県出身者群、沖縄県居住者群の群間比較の結果は、とくに第1因子と第2因子における差異およびずれが顕著であることを示している。(5)群間のずれは対鹿児島県人イメージの場合と較べて、対沖縄県人イメージの場合の方が大きい。そのずれはとくに第1因子において著しくなっている。本研究結果に示されるように沖縄県人と他都府県人との間の認知的ずれはかなり大きいが、このことは沖縄県が永年歴史的に隔絶された状況下にあって、沖縄県人と他都府県人との相互交流が極めて困難であったことの事実を考えると当然の結果として受けとめることができよう。復帰後、年々急速な勢いで沖縄県人と他都府県人との交流が深められつつある。そのなかで、人々は相互にどのような有効な対応の仕方を獲得し、それを定着させていくのか、また、その過程で、本研究で見い出されたような相互間の認知的ずれがどのように変容していくのかは今後実証的に明らかにされるべき課題である。そのことに関しては、今後の詳細な時系列的な研究に委ねることにしたい。
- 1980-03-31
著者
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