脳浮腫動態における Aquaporin の役割に関する研究
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概要
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脳浮腫は脳疾患の予後に関与する重要な要因である. 脳浮腫に関与しうる因子は多く存在するが, 近年水の細胞チャンネルであるアクアポリン (aquaporin : AQP) と脳浮腫の関係が注目されている. 本研究では培養アストロサイトを用い, 低浸透圧液, 高浸透圧液, vascular endothelial growth factor (VEGF), ベサメタゾンで刺激し, 刺激前後のAQP3, 4, 5, 8, 9のmRNA発現の変化をリアルタイム定量的RT-PCR法で測定し, 脳浮腫との関連を検討した. AQPはアストロサイト中に恒常的に発現されており, 中でもAQP4が他のAQPの1万〜100万倍多量に発現した. 低浸透圧液刺激ではAQP4を含むすべてのAQP発現が減少し, 高浸透圧液刺激ではAQP4, 8が高発現した. VEGF刺激ではAQP4の変化はなく, AQP3, 8の発現量は増加し, AQP9の発現量は減少した. ベサメタゾン刺激ではAQP3の発現量が低下した. 外傷, 虚血による脳損傷病態では組織浸透圧の上昇を認め, 浸透圧格差により水分移動が生じ, 脳浮腫が進展すると考えられている. 本研究により脳組織浸透圧上昇は脳内アストロサイトでのAQP4発現増加につながることが明らかになった. 浸透圧が上昇している脳損傷部位ではAQP4発現が増加していると考えられる. 水分は水チャンネルAQPを通して移動する. 従ってAQP発現上昇は脳浮腫病態の悪化を招くと考えられる. 浸透圧上昇によるアストロサイトAQP4発現上昇の抑制法開発が脳浮腫治療につながると期待される.
- 近畿大学の論文
- 2004-10-25
著者
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