江戸時代の儒学の一派に「古学派」と称される学派がある。幕府の正当な学問である朱子学が、「性善説」に基づく楽観的な人間観を唱えたことに対して、彼等は現実重視の立場から反旗を翻した。そのパイオニアが山鹿素行である。素行が朱子学に対して行なった批判を四書の一つである『大学』の「三綱領」の解釈を通して考察するのが本稿の目的である。