二三の三元合金のα型結晶X線干渉線サテライトの本質と表面再結晶の方法による新相α'の分離に就て.(I)
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概要
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(I)鐵・ニッケル・アルミニウム系 錢・ニッケル・アルミニウム系合金のX線的研究の結果,新相α'(金屬間化合物NiAlの固溶體でCsCl型結晶構造を有す)が導入せられて三元系平衡状態圖が一新せられ磁氣的硬化組織の結晶構造に關するW. Kosterの學説が根本的に改められるに至つた事前に報告せる所である.即ち,新相α'の導入によりW. Kosterの状態圖に於ける(α+γ)-不均一系は(α+α'),(α'+γ),(α+γ)及び(α+α'+γ)の諸部分に分割せられるに至り磁氣的硬化の原因は從來知られて居なかつた所のα-型結晶の二相分離現象に基く事となつたのであるが,α'-相とα-相との識別が頗る困難であつた爲めに從來多くの學者によるX線的研究があるにも拘らずW. Kosterの學説の誤謬が發見せられないで居た樣な次第であつて,α'-相の導入に至る迄には非常に多くの物理金相學的諸問題が存在してゐたのである.前報告に於ては主としてその結論のみが述べてあつて,新相α'の導入過程に於ける上述諸問題に就ては專ら省略に從つてゐたのであるが,本三元系に於けるα-型結晶の二相分離現象が最近物理金相學上重要なる問題となり,又其後諸外國に於て同樣の結晶構造を有する所の加工可能なる耐久磁石の一群が續々出現するに至り新相α'の發見が耐久磁石工業上重要なる歴史的意義を持つものとなつた關係上茲にその説明の概略を述べて前報告の補足とする.α-型結晶X線干渉線サテライトの本質に就て.本系合金の燒鈍試料の示すX線干渉線は一般にdiffuseしてゐるが,そのdiffuseする状況が格子歪等による場合と趣を異にしてゐる即ち,CoKα二重線の中でKα_1はKα_2よりも波長が短くて強度が大きい.格子歪があつてX線干渉線がdiffuseする場合この二重線の分離は困難になるがそのホトメトリー曲線を吟味して見るにKα_1の位置に頂點があつて,その波長の長い方の側にKα_2がサテライトとなつて存在してゐるのが常である.然るに本系合金の燒鈍組織の示すX線干渉線のホトメトリー曲線を吟味して見るにKα_1の波長の短い方の側にサテライトが出現する事があつて,X線干渉線のdiffuseする状況が普通の場合と異つてゐる.X線廻拆のBraggの式より考察して,上述の現象は試料の一部に於て格子常數が大きくなつてゐる事を示す.即ち,格子常數を異にする多くのα-相の集合を示す事がわかるのである.表面再結晶の方法による新相α'のX線的分離に就て.本系合金の燒鈍試料の示すdiffuseせるX線干渉線が格子常數を異にする多くのα-相の集合を示す事上述の如くであるが,これは燒鈍過程が完全に進行しないために未だ完全なる平衡状態が實現せられないからである.茲に述べる所の表面再結晶の方法は要するに試料が平衡状態に達するのを促進する方法の一つであつて,試料の研磨面を眞空中或は水素氣中に於て燒鈍する操作である.(金屬を加工して後燒鈍を行ふと再結晶現象が起るが,研磨面を眞空中或は水素氣中に於て加熱する操作も要するに加工燒鈍の操作に外ならないのでかくの如き名前を附したのである).實驗の結果眞空中に於て燒鈍した試料の表面層に於ては始め不安定γ-相が現れる事があるが,燒鈍過程が進行するとγ-相の干渉線が消失して體心立方晶X線干渉線に分裂が起る事がわかつた.さて,試料の表面層に於ける實驗結果より直ちに試料の内部に於ける變化を簡單に結論するわけには行かないが,上述の實驗結果より試料の内部に於てX線干渉線がdiffuseする現象が促進せられて平衡状態に達する時には組織は二つの體心立方晶の共存を示すであらう事が想像せられるのである.表面再結晶の方法により分裂したX線干渉線を吟味して見るとその分離の程度は閃光角をθとしてtanθに略〓比例してゐる事がわかる.又その各〓をα-鐵の示すX線干渉線と比較して見るに各指數に於けるX線干渉線の分離の程度が矢張りtanθに比例してゐる事がわかる.此等より考察して表面再結晶の方法によりα型結晶の二相分離現象が現れた事がわかるのである.又種々の成分の試料に就て吟味して見るに二つに分裂した體心立方晶の中で格子常數の大なる方の分量に比例して(001),(111),(012)等のSuperlattice lineが觀察せられてCsCl型結晶構造を示し,これは新相α'に外ならない.かくの如く表面再結晶の方法により新相α'のX線的分離が常に可能となつたのである.
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