渦亂流に關する相似性理論の環状斷面の管に沿うての流れに對する應用に就いて
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概要
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前論文(報告第180號)に於いて,著者の一人友近は,二つの同心圓によつて圍まれた環状斷面を有する眞直ぐな管に沿うて一定の壓力勾配のもとに流れる渦亂流に於ける平均速度の分布を,PRANDTLの運動量輸送の理論及びTAYLORの渦動度輸送の變形理論を使つて理論的に計算し,その結果をMIKRJUKOVの實驗結果と比較することによつて,渦動度輸送の變形理論の與へる結果の方が運動量輸送の理論の與へる結果よりも實驗結果によく合ふといふ結論に到達した.同樣の結論は,TAYLORによつて,眞直ぐな圓管に沿うての渦亂流の場合にも得られてゐるが,この樣に,圓管に沿うての流れの場合に於いても,又環状斷面の管に沿うての流れの場合に於いても,渦動度輸送の變形理論の方が運動量輸送の理論よりも實測結果に近い結果を與へることは,圓管及び環状斷面の管に沿うての渦亂流の機構が,孰れの場合に於いても,運動量輸送の理論に於いて假定してゐるものよりも寧ろ渦動度輸送の變形理論に於いて假定してゐるものに近いものであらうことを示唆するものと考へられ,興味深いことである.さて,同じ樣な環状斷面の管に沿うての渦亂流に於ける平均速度の分布は,渦亂流に關するKARMANの相似性理論を應用して計算することも出來る筈である.果して相似性理論は如何なる結果を與へるであらうか.これを研究することも亦極めて興味深く且つ重要なことと思はれる.本論文の目的は,相似性理論を應用して,斯樣な環状斷面の管に沿うての渦亂流に於ける平均速度の分布を理論的に計算し,その結果を前論文に於けると同樣に,MIKRJUKOVの實測結果と比較することにある.相似性理論を,平行な二つの平面壁の間を流れる渦亂流及び圓管に沿うての渦亂流の場合に應用して平均速度の分布を計算することは,既にGOLDSTEINによつてなされてゐるが,圓管の場合に對するGOLDSTEINの解析と同樣の解析を環状斷面の管の場合に遂行するのが即ち本論文の目的である.前論文に於けると同樣に,平均の流れは定常的で且つ管の軸に對して對稱であると假定する.平均速度をUとし,管の軸から環状領域内の任意點に至る距離をrとすると,dU/drは平均速度が最大になる場所に於いて符號を變へるから,前論文に於ける樣に,環状領域を所謂内部領域及び外部領域の二つに分け,此等を別々に取扱つた.相似性理論では,REYNOLDSの剪斷應力τと壓力勾配との關係を考へて平均速度の分布をきめる基本方程式を求めるところの所謂τ理論と,管の軸の方向の運動量Mと壓力勾配との關係を考へて同樣の基本方程式を求めるところの所謂M理論とがあるが,本論文では此等のτ理論及びM理論の二つを應用して平均速度の分布を計算した.計算の結果をMIKRJUKOVの實驗結果と比較したところによると,τ理論の與へる結果は,内部領域及び外部領域の孰れに於いても,壁の極く近くを除けば,領域の大部分に於いて,満足すべき程度で實測結果に一致するが,M理論の與へる結果と實測結果との一致は,内部領域及び外部領域の孰れに於いても,相當不良の樣である.
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