直線渦に依る自由境界面の變形に就て
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概要
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翼の空氣力學的特性が,流れに境界の有る場合著しい影響を蒙ることは周知の事實であつて,地面効果或は風洞境界の干渉等の名の下に幾多の理論的並びに實驗的研究が爲されて居る.併し乍ら,翼型まで考慮した嚴密な取扱ひは,問題を二次元流に限つても著しい數學的困難を伴ふ爲に現在極めて少く,殊に自由表面を境界とする場合の研究に到つては,筆者の知る處では僅か一二を數へるに過ぎない.之が爲,此の種の問題を取扱ふには,通常先づ翼を適當な束縛渦系で置き換へ,然る後適當な一群の鏡像渦を導入して境界の影響を代表するといふ方法が採られる.さて,流れの境界に於ては,(1)固定壁に沿つては流速の法線成分は零,(2)自由表面上では壓力一定,從つてBERNOULLIの定理に依り流速の大いさは一定-なることが要求される.固定壁に於ては,鏡像の方法に依り境界條件が嚴密に滿されることは明かであるが,自由境界に於ては事情は一變する.即ち此の場合鏡像法は境界の變形が無視し得ることを前提として,翼を代表する束縛渦に依り境界上に誘導される速度の切線成分が零なる如く鏡像渦を定めるのである.渦の強さが小であるか,或は渦と境界の距離が大ならば,斯る近似法も妥當であるが,翼の揚力が大,從つて其の周りの循環が大なる場合,又は翼が境界面に近接する場合には,境界面自身の變形が重要な意味を持つものと思はれる.之に關聯してF. RIEGELSは(1937年)問題を理想化して,固定壁と自由表面で境された有限幅の流れの中に一本の固定直線渦が置かれた場合,自由表面が如何なる變形を受ける可きかを論じた.其の方法は一種の逐次近似法で相當面倒な操作を必要とする.最近C. SCHMIEDENは同じ問題を等角寫像法を用ゐて嚴密に解き得ることを示した.但し結果の式は一部分積分形の儘で殘されて居る.而して實際には,特別な一例を選んで數値積分を遂行して自由表面の變形を論じたのである.本論文では,同じ問題を別の方法で取扱つて見た.結果の諸式は悉く初等凾數のみで表はされSCHMIEDENの式に比して遙かに簡單である.而も其の方法は他の類似の問題にも全く同樣に適用され,其の際,個々の問題に對して特別な寫像函數を必要としないといふ利點を有する.さて,平面固定壁に沿ふ一樣な速度の半無限大の流れの中に一本の固定直線渦が置かれたときの流れは,鏡像の方法の最も典型的な應用例として良く知られて居る.然るに之に對應して,自由表面を境界面とする場合は,共の理論的重要性にも拘はらず未だ嚴密な取扱ひを見ない.夫故,此の場合を例として筆者の方法を説明し,且つ境界面の變形に就て特に詳細な議論を試みた.次に有限幅の流れに移り,兩側自由表面の場合,及び片側固定壁で片側自由表面の場合(RIEGELSの問題)を研究する.最後に,固定壁に沿ふ流れが自由表面を形成して之を離れる場合を考へる.之は大體,開放風洞の噴出口附近の状態を表はすものと思はれる.
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