平面翼の周りの循環に對する壁の影響に就いて
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概要
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平面翼の揚力に對する剛體壁の影響に關しては,實際的に重要な二三の場合に就いて,詳しい理論的研究を遂行したが,斯樣な平面翼の周りの循環自身が果して壁から如何なる影響を受けるかを吟味することは興味深いことである.この論文では,(i)平面翼の下方に壁を有する半無限大の流れの場合即ち所謂地面効果の場合,(ii)平面翼の上方に壁を有する半無限大の流れの場合,及び(iii)平行壁の間の流れの中に平面翼を置く場合の三つの場合に就いて,平面翼の周りの循環が壁のために如何に影響されるかを詳しく論じた.得られた結果を要約すると,次の樣である.一般に,平面翼の周りの循環は壁のために大きい影響を受ける.そして,その影響は翼を壁の極近くに置けば置く程著しい.迎角が15°より小さい實用的な場合を考へると,翼の中點と壁との距離が翼弦と同程度であるか若しくはそれより小さい時には,三つの場合の孰れに於いても循環が著しく増加することが認められる.同樣の増加は揚力に於いても認められることは既に示したところであるが,揚力の曲線と循環の曲線とを比較して知れた興味あり且つ重要な結果は,壁の影響による揚力の増加は大部分循環自身の増加に基因すると考へられることである.地面効果の場合に揚力曲線の方が循環曲線よりも下にあることは,この場合には翼の場所に於ける流れの有効速度が無限遠に於けるものよりも小さいためであることを示すものであり,又壁が翼の上方にある時には,揚力曲線が循環曲線の上にあるが,これは翼の場所に於ける流れの有効速度が無限遠に於ける流れの速度より大きいことを示すものと考へられる.而して,平面翼が平行壁の中間にある時には,翼の場所に於ける有効速度は無限遠に於ける流れの速度と殆んど等しいと考へられる故に,揚力曲線と循環曲線とが殆んど一致するであらうことが上の二つの場合の結果から豫想される譯であるが,計算の結果は果してその通りであることを示してゐる.尚,循環自身が壁のために大いに影響され,その變化が揚力の變化の原因の大部分であることは,普通翼の諸性質に對する壁の影響を近似的に論ずる際に使はれてゐる鏡像の方法の適用範圍に重要な制限があることを示すものと考へられる.この結果は興味あり且つ重要であると思ふ.
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