振動の生體に及ぼす影響(1)
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概要
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白マウスを被驗動物として,振動臺上にて前後振,左右振並に竪振を課し,之に10〜20gの振動加速度を1〜16分間負荷して,振動死並に各種の前驅兆候の出現状況を觀測し,併せてその禍害の程度と經過とを調査したる所,大要次の如き結果を得た.(1)振動の影響は竪振に於て最大で,前後振が之に次ぎ,左右振はさまで著しくない.振動死の起發率は,竪振約75%,前後振約45%,左右振約35%であつて,振動方式の如何によつて,振動效果に大なる差異がある.(2)振動死の出現は概ね悉無律に從ふものゝ如く,生死の境は寔に紙一重である.(3)振動死の出現は性別とは關係が薄く,雌雄の死亡率は略々同一である.(4)振動死の起發状況は振動時間並に振動加速度の増減につれて増減し,その變化關係は極めて規則的正しい對數曲線を描く.而して,一般に振動時間の長短よりは,振動加速度の大小の方が一層重大なる意義を有するものゝやうである.(5)振動方式の如何を問はず,振動の作用には一種の時間餘裕並に強度餘裕の存在が認められる.即ち,振動時間に就て云へば,前後振25秒以下,左右振30秒以下,竪振20秒以下の短時間では25%以上の振動死を生ずることなく,また振動加速度に就て云へば,前後振5〜6g以下,左右振12〜13g以下,竪振2.5〜3g以下の振動加速度では同様に25%以上の振動死を見るが如きことはない.(6)振動死の起發状況の規則性に基つき,我々は振動の諸元と振動死の起發率との關係を確定し,振動死の出現を豫測し,之が防止に必要なる振動許容限界の要件を算定すべき若干の公式を樹てることが出來た.(7)振動死の事例に就き剖見の結果,振動死の直接原因として,機械的震盪に基つく諸器官の擦傷若くは破傷,及び血液の流體力學的衝撃による血行障礙若くは血管破裂の2種をその最たるものと認めたが,前者は特に左右振並に竪振の場合に著しく,後者は比較的に前後振の場合に甚だしい模様である.また左右振では胸腔及び腹腔内の諸臓器の震盪が激しく,竪振に於ては寧ろ頭部從つてまた腦の震盪が大なるやうに見受けられる.從つて,これ等の振動方式の如何に應じ,夫々異つた防護對策が講ぜらるべきである.(8)振動實驗後の死亡數は少く,しかもその大半は振動終了直後に死亡してゐる.即ち,實驗後の死亡状況を比較すれば,左右振では約1晝夜,前後振では約20時間,竪振では僅かに12時間で死亡して居り,竪振がこの點でも最も影響が顯著である.(9)振動死の前驅兆候としては,呼吸深化,顫慓,動作停止,動作不能並に局所的充血及び出血等があるが,これ等は大體規則正しい序列を成して出現するらしい.即ち,振動時間並に振動加速度の増加につれ,先づ呼吸深化が現はれ,顫慄が之に續き,動作停止が生じて,遂に運動不能に陥り,更に振動死を來たすものゝ如く,この順序は極めて整然である.但し,振動方式によつては,この順序が多少轉逆する場合もある.(10)これ等の諸前驅兆候の出現條件も概して規則的で,振動加速度並に振動時間に對して,常に一定の對數的關係を保持して推移するらしく見受けられる.從つて,我々は比較的に輕微なる現象,例へば呼吸深化若くは顫慄を目標として,一層大なる振動の害惡例へば振動死の禍害をば未然に防止することが出来さうである.
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