翼の三元フラッターに於ける振動現象
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概要
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この論文は前に出した二つの歐文報告の續きとして三元フラッターの問題を論じたものであつて,二元フラッターに就ても適當に補つた所がある.實驗に用ひた模型は前回に使用したものの一つであるU.S.A. 35Aであつて,今回は特に負の迎角の場合を研究したのである.又,翼や風力の細い事柄に差異があつても,A_1/A_0, A_2/A_0,...., A_6/A_0が夫れ夫れ一定でありさへすれば,振幅分布以外は模型の實驗結果をその儘實物へ持つて行かれる事がわかつた.この研究でも,フラッターの性質を各風速に於ける振動數と振幅とから確めた.フラッターは氣流の亂流から生ずる共振現象でなく自由振動の不安定の状態である事もわかつたのである.若し共振とすると不安定になる境の風速のみで大振幅になる筈であるのに,結果にはそれが認められない.從て不安定は流線の剥離の爲の風力分布の變化にはよるけれども,その爲に生ずるかも知れぬ週期的強制力には關係がないのである.實驗の結果から,三元フラッターの低い方の風速では撓み振れが勝ち高い方の風速では捩り振れが主であることがわかつた.この撓み振れから捩り振れに變る所で振動數も急激に變り,その不連續性が現れるのである.この不連續性の程度は翼の撓み剛度と捩り剛度の割合によつて變る.そのフラッターの部分が撓み型であるか捩り型であるかに從て補助翼の振動位相が主翼のそれよりも遲れるか進むことになる.補助翼の剛度が高くなる程,振幅は小さくなり,位相差も少くなる.撓み捩りの二元フラッターの撓み振れと捩り振れは三元フラッターのそれ等と大體一致した性質をもつてをる.又,之等は同時に撓み補助翼フラッター及び捩り補助翼フラッターの各二元フラッターの性質と酷似してをるものである.數學的研究によると三元フラッターには各風速で三つの振動數とそれに伴ふ三つの減衰係數とがあるが,フラッターの状態では之等の中の一つの減衰係數が逆の符號となる場合が主である.この計算結果は,フラッターの限界に於ても,振動數に於ても,振幅比に於ても,又振幅位相差に於ても,實驗の結果と可なりよく一致することがわかつた.この研究の結果によつて翼フラッターの限界速度を高くする一つの方法が存在することに氣がついた.即ち,翼に適當の質量と彈性力と減衰力のある振子を取付けることによつて,限界速度が可なりの程度まで高くなるのみでなく,同時に若しフラッターに入つた場合があつてもその状態の振幅が割合に小さいことがわかつた.補助翼をこの目的に使用することもできるけれども空氣力學的の彈性力及び減衰力が大き過ぎ,自身のそれ等の力を適當に加減する餘地が少いから餘り望みがないやうである.振子を機體に影響なく理想的に取付けるには如何にすればよいかといふことは只今研究中である.
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