中唐期に於ける絵画と文学 : 白居易と絵画
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
中国の画師を記録した張彦遠『歴代名画記』には、唐代の画師として二〇六人(実際には二〇八人)の名を載せる。専門の職業画師もいれば文人として名の高い者もあり、前者には呉道玄、後者には王維などがある。唐代の絵画は一部を除いて実作が残っていないので各種の文献や資料からその実態を知る手がかりを求めることが必要だと言われている。以前から、文学の世界と絵画の世界はまったく異質の世界に見えてその裏面につながるものがあるのではないかとの疑問を抱いていた。中唐期の文学の変貌が絵画への距離を近づけた面があると思われ、その顕著な例として白居易を採りあげて先の疑問について考えてみようとしたのがこの小論の出発点である。それと最近中国絵画についての著書の書評をするために中国の絵画について調べているうちに、絵画研究の傍証の資料ではなく文学の世界から逆にアプローチする可能性、また二つの世界にはある種の接点があるのではないかと思いいたるところがあり、正解の結論は出ないまでも問題提起の一つの試論としてまとめたものである。こうした視点からの研究はほとんど無いといっても過言ではなくそのような意味でも文字通りの試論である。
- 2005-03-31