琉球・宮古島の島尻層群上部新生界浮遊性有孔虫
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概要
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宮古島を広くおおう琉球石灰岩層群の下に横たわる島尻層群は, これまで琉球石灰岩と同様に南西にゆるく傾斜すると考えられていた。しかし, 今回の野外調査により, 同石灰岩と共に北西-南東性断層に切られて層序学連続性が断たれているとはいえ, 南東に緩傾斜する一般構造をもつことが明らかとなった。したがって, 島尻層群は同島北東縁に沿って幅狭く分布するものの, 北西より南東にかけて順次上位の層準がきて, その全層厚は600メートル以上におよぶこととなる。そして, 下位より上位にかけて, 浅海成の砂質泥岩層を主として砂岩層を夾む南静園累層, 塊状泥岩を主とする与那浜泥岩層, 砂岩・泥岩互層より成る嶺原互層の3累層が識別され, ここに提唱された。さらに, われわれは全層厚67層準にかけて系統的サンプリングをおこない, このうち浮遊性有孔虫化石を多産する29層準のサンプルを用いて, 浮遊性有孔虫層序区分を試みた。その結果得られた6,499個体を詳しく分類して89タクサに分け, BLOW (1969) の標準区分のうちN.17よりN.22までの存在を認めた。これら化石帯の上下関係は, 今回の野外調査で明らかにした関係と全く調和するものである。現在, なお若干の異説はあるが, ここでは, N.17/N.18を中新・鮮新統境界, N.21/N.22を鮮新・更新統境をしておく。このように琉球石灰岩層群と島尻層群との間には, 少なくとも宮古島では著しい傾斜不整合関係の存在が指摘される。それによって示される明瞭な(陸化?)削剥の時代は, N.22を下部更新統とする限り, 第四紀前半のうちにあることとなる。なお, ここで扱った浮遊性有孔虫各種のうち, 化石層序的または分類学的に問題のあるものについては, 本文および図版説明中に簡潔なコメントを付した。本研究の野外調査に際して, 沖縄開発庁農林水産部の古川博恭氏, 宮古農林土木事務所の方々に種々の御便宜を頂いた。また宮古工業高等学校長安里芳郎氏をはじめとする同島の諸先生にも, 多大の御協力を頂いた。これらの方々に深く感謝する。
- 国立科学博物館の論文
著者
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大木 公彦
鹿児島大
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大木 公彦
鹿児島大学総合研究博物館
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氏家 宏
国立科学博物館地学研究部
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氏家 宏
琉球大学理工学部海洋学教室
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氏家 宏
国立科学博物館地学研究部:(現)琉球大学理工学部海洋学教室
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大木 公彦
鹿児島大学理学部, 地学教室
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