小笠原諸島のカニ類, V : ドレッジにより得られたカニ類
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概要
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1976年7月, 国立科学博物館の「伊豆マリアナ島弧の自然史科学的総合研究」の一環として, 父島西北部沖でドレッジによる底生生物調査が行なわれた。当初は父島周辺全域にわたる調査が計画されたが, 底質, 費用などの制約により, 結局18地点のみに限定された。カニ類は12地点より得られたが, それらは9科26属28種に同定され, そのうちには5新種, 9日本新記録種が含まれている。上記の種以外に, 得られたサンプル中より拾い出した甲殻, 鉗脚の破片を同定した。しかし, オウギガニ科数種の細片については属の限定も不能で, またガザミ属の種の不完全な鉗脚も種の同定はできない。確実に同定し得た種は8属8種で, 上記25種との共通種はSt. 12および15から得られたPraebebalia taeniata sp. nov.のみである。この1種を除いた7属7種を加えると, 今回記録されたカニ類は結局31属35種ということになる。ほぼ同規模のドレッジ回数で得られた種子島沖のカニ類は38属46種であったから, 父島沖のカニ類は種数についてかなり, また個体数においてはるかに少ない。この点に関しては, 同時に得られたエビ, ヤドカリ類においてはより顕著で, これを考え合わせると, 今回得られた十脚甲殻類が, 小笠原海域が大洋的であるという特性を如実に示しているということができる。 28種中わずかに2種が, また破片から同定した8種中4種が従来小笠原から知られているのみで, 調査がいかに不十分であったかが端的に示されている。合計35種中わずかに4種が種子島と, 他の5種が琉球列島と共通である。日本の海域既記録21種中6種が日本の固有要素と考えられるもので, 言い換えれば, 5新種を除いた30種中24種が明らかに南方要素の強い種である。したがって, 小笠原の浅海域のカニ類相は, 強い南方要素の中に若干の日本中南部固有要素がはいって構成されていると推察することができる。今後の広域にわたる浅海調査の必要性が痛感されるが, これとともに, 磯のカニ類の同定結果が示されれば, 小笠原海域のカニ類相の特性がより明確になるものと思われる。
- 1977-12-20
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