自然に対する関心度についてのアンケート調査結果
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概要
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1. このアンケート調査は"自然保護教育のためのカリキュラム作成に関する研究"の一環として, 1980年に実施された。小学生から一般社会人まで, 収集したアンケートの有効回答数は4663である。2. 身近に見られる動植物としてあげられるものには, 地域や学年によるちがいがあまり顕著には見られないが, 小学校低学年では園芸植物やペット動物をあげる傾向があるのに対し, 小学校高学年以上になると野生生物への関心も大きくなる。また, 列記された生物名は植物では種名で書かれるものが多いのに対して動物では綱や目, あるいは科の単位で書かれたものが大部分である。3. 特定の生物に対する認識のしかたを調べた結果, アサガオ・レンゲ・アブラゼミ・モンシロチョウなどのよく知られた生物はどの学年でも実際に野外で実物を見ているのに対して, ガマズミ・キンミズヒキ・ハナミズキなどは逆に名前すら知らないという回答が多い。また, オオイヌノフグリ・コナラ・ヒガンンバナ・イモリ・コウモリ・シジュウカラ・ヒキガエルなどは学年があがるにつれて, 実物を見たという回答率が増加する傾向がある。4. 身近な自然の存在の認識のしかたは学年と関係があり, 学年が上になるにつれて"自然がある"という回答率が高くなる傾向が見られ, これは行動域の拡大に関係していると考えられる。しかし, このような自然で遊ぶ頻度は小・中学生とも学年が上になるほど少なくなる。5. 昆虫や植物の採集経験の有無は, 小学生で30〜52%, 中学生で53〜75%, 高校生以上で62〜91%というように, 学年が高くなるにつれて経験者の率が高くなる。動植物の飼育や栽培による観察では多くの生徒がおこなったことがあると回答している。その対象となった生物は植物ではアサガオ・ヒマワリ・ヘチマ・ホウセンカの順で, 動物では昆虫としてカブトムシ・クワガタが圧倒的に多く, 次いでスズムシ・カマキリ・セミと続く。鳥類ではインコ・ニワトリ・ジュウシマツ・ブンチョウ・スズメの順でペット用の飼い鳥が多い。このほか金魚・イヌ・ザリガニなどの飼育例が多い。6. 自然観察会への参加者は少なく, 学年別に見ると10%前後で, 多くても20%である。7. 生物に対する知識的な面では, 小学生は学年が上になるほど正解への回答率が高くなる傾向が見られる。しかし, 中学生以上になるとこのような傾向が見られない。また, 知識面では学校による差異が大きいと思われる。8. 自然観察会への参加者と不参加者とを比較すると, 参加者のほうがふだん気がつきにくい生物, あまり名前を知られていない生物について野外で実際に見たり, 名前を知ったりすることが多い。また知識の面でも小学生では参加者のほうが正解への回答率が高くなり, 自然や生物への関心や興味も大きくなる傾向が見られる。
- 1983-03-25
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