水俣病の発症機序に関する生化学的研究
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概要
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この綜説は,1958年から今日に至るまで熊本大学及び銀杏学園短期大学で行われた水俣病の発症機作研究を,主に次の三点を中心に要約した.1.メチル水銀化合物を水俣病の原因物質として化学的及びその発症性により固定した.水俣湾産の有毒貝Hormomya mutablis Gould,を分画して,発症性と水銀分布が一致し,共に有機,脂溶性また貝蛋白との結合を示した.両者に共通する溶媒抽出性と溜出性を利用して,有毒貝から水銀化合物を結晶化した。その分析及び化学合成実験から,この水銀化合物がmethyl methylmercuric sulfide (MS),CH_3HgSCH_3であることが明らかとなり,このメチル水銀の合成標品による動物実験から原因物質としての発症性を確認した.2.メチル水銀化合物の代謝動態について,MS及び[^<14>C]又は[^<203>Hg]メチル水銀化合物の代謝についてvivo及びvitro実験をまとめた.これらの成績からメチル水銀により,特異的に侵襲をうける体内代謝の所在が示された.3.メチル水銀化合物の発症性に関する分手機作,脳皮質の解糖系及及びそのミトコンドリアの呼吸とリン酸化反応を中心として,それぞれのメチル水銀による阻害の分子機作を要約した.
- 1983-01-15
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