「看護労働力不足」論議の政治経済学 : 日本の医療供給政策と看護労働力[I]
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概要
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生産者行動の理論の中から,消費者主権の原則という先験的公準を取外し,と同時に,マスコミをも動員した生産者主導の政治的圧力を重ね合わせれば,生産者行動の制約条件を幾分緩和させることのできる,そうした状況を仮設してみる。そしてこの上で,生産要素の資源配分問題を考察してみることにしよう。この格好の思考練磨の場の1つに,医療サービスのインプットである看護労働力を対象とした「不足」論議という政治経済問題があると言える。そこで「日本の医療供給政策と看護労働力」というテーマのもとで,消費者需要の神聖不可侵性という経済学上の約束事を忠実に守り通すわけにもいかず,かといって専門的な生産者の欲求のみを神聖不可侵視することもできないという,思考に足枷を科せられた環境の中で,昨今では,「看護婦不足の解決は,『国民的合意』を得ている唯一の医療問題」とまで目されている「看護労働力不足」問題を,再考してみることにする。なお本稿は,「看護労働力」にまつわって,いかなる事実認識がなされているのか,そしてその認識は,いかなる価値前提に基づいて「不足」という名で問題視されているのかを明示的に取扱いながら,そこで見出される価値前提は,今日の医療供給政策を支える価値前提と,互いにいかなる関係を持っているのか,すなわち,われわれは医療保障政策に対してどのような選択の局面に立たされているのかを探る作業の,準備段階に相当する。
- 慶應義塾大学の論文
- 1993-10-25
慶應義塾大学 | 論文
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