精神薄弱児の記憶における概念的群化の研究 : 刺激呈示法による効果の違いについて
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概要
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本研究の目的は,精神薄弱児の自由再生における概念的群化が刺激呈示方法によってどのような影響を受けるか比較検討することであった。そのために,45人の軽度精神薄弱中学生(IQ50~79)が次のような3群に分けられた: a)描画呈示群(P),b)文字呈示群(W),c)聴覚的呈示群(A)。記憶の材料は,4つのカテゴリー(動物,乗物,食物,道具)のそれぞれに15刺激ずつ合計60項目から成り立っていた。そのリストが試行毎に異なるランダムな順序で呈示され,実験は3試行までつづけられた。実験の結果,群化量(同一カテゴリーに属する項目の連続再生量)に関して,P群はW群よりも有意に多かった。他の比較対の間には有意な差が認められなかったが傾向としては各試行を通じて一貫して,群化量の多い方からP群,A群,W群の順であり予想が支持された。再生量についてみると,第2試行においてのみP群はW群よりも有意に多かったが,傾向としては群化量と並行してP群,A群,W群の順に多かった。また,試行の経過にともなって,3群のいずれにおいても群化量と再生量ともに有意な増加が認められた。したがって,群化および再生においてP群が他の2群よりもすぐれているという結果に関して,描画刺激の場合には言語的刺激と比較して,具体的な水準での概念使用および項目間の内的連合反応が促進されるためと解釈された。このような効果は,言語的媒介能力の低い精神薄弱児においては特に意義のあることが述べられた。To compare the effects of stimulus exposure's methods for categorical clustering in a free recall task, 45 educable mental retardates (middle school pupils) were assigned three treatment conditions; (a) picture stimuli (P), (b) word stimuli (W), (c) auditory stimuli (A). A 60-item list consisting of 15 stimuli from each of 4 categories was given in a different random order for each of three trials. On a measure of clustering (repetition), group P clustered more significantly than group W. On recall, group P recalled more significantly than group W at the second trial. Now then, both clustering and recall did not differ significantly between group P and group A. However, group P was consistently superior to group A in both scores. Further, with the trials, each of three groups progressed significantly on clustering and recall. On clustering and recall, the primacy of group P over the others was explained as the effects of both concept utilization on level of concreteness and implicit associative responses for picture stimuli.
- 大阪教育大学の論文
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