レーザーによる血管吻合に関する実験的研究
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概要
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低出力炭酸ガスレーザーを用い,小動脈(直径2〜4mm)小静脈(直径8〜10mm)に対して血管吻合が可能か,またその際の至適条件を求める目的で,雑種成犬を使用し以下の実験的研究を行った。まず摘出した血管壁に対して,出力20,40,60,80mWで,照射時間が血管壁1mmにつき頚動脈では5秒,10秒,20秒,頸静脈では2.5秒,5秒,10秒間(以下10sec/mm) となる様直線的に往復照射して, 組織学的検討を行った。その結果,血管壁への侵襲が軽度で,かつレーザー血管吻合に必要な凝固層の形成が良好であった条件からみて,頸静脈では出力20 mWで照射時間10sec/mm(以下20mW-10sec/ mm)及び40mW-5〜10sec/mmが,頸動脈では40mW-10〜20sec/mm及び60mW-5〜10sec/mmが血管吻合の至適条件と考えられた。支持糸の間隔は,大腿動脈の縦切開,大腿静脈の縦切開及び横切開では4〜5mm以内,大腿動脈の横切開では3mm以内が安全であると考えられた。血管吻合部の強度については,小動脈切断後4点支持によるレーザー吻合(40mW-10sec/mm) の抗張力は1034±104g(n=20)であり,6-0プロレーン糸連続縫合との間に有意差は認められず,耐圧試験でも最高血圧を200-300mmHgに維持して30分〜2時間観察したが,40mW-10sec/mmの11箇所の吻合部中出血が見られたのは1筒所のみであり,又40mW-20sec/mmで吻合した6箇所には出血は全く起こらなかった。一方,組織学的にも血管吻合部は強固に癒合しており,縫合糸による吻合よりも内腔の狭少は少なく良好な癒合所見が得られ,臨床応用への足掛かりが得られた。
- 神戸大学の論文
- 1989-09-12