ラット糖尿病モデルにおける腎自動調節能の検討
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概要
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ラット糖尿病モデルを作成し,腎血流の自動調節能に関する検討を行った。ウィスター系の雄ラットを用いストレプトゾトシンの腹腔内投与により,高血糖状態(血糖値350mg/dl以上)を生じさせた群(糖尿病群n=11),同様な方法で高血糖にした後ウルトラレンテインスリンの連日皮下投与(2-8U/day) により血糖値を200-300mg/dlに維持した群(インスリン治療群n=10),同週齢のコントロール群(n=11)の3群について検討を行った。ストレプトゾトシン投与4-8週の時期に血圧の降下に対する腎血流量の変化を電磁血流計によって測定した。糖尿病群ではコントロール群と比べ腎自動調節能の障害を示した。一方インスリン治療群においては糖尿病群と比べ自動調節能は保持される傾向を示した。さらに糖尿病状態の継続期間と腎自動調節能の関係を調べるため糖尿病発症早期の別のラット群(糖尿病n=11,同週齢のコントロール群n=11)においても同様に自動調節能の検討を行った。この糖尿病発症早期のラット群においては自動調節能の障害は認められなかった。これらのことより糖尿病状態においては血圧の変動に対して腎血流量が変動し易い状態にあり,糸球体血管の庄障害に対する防御能が低下している可能性が示唆された。さらに糖尿病モデルにおいて自動調節の障害は,糖尿病状態の継続期間と共に徐々に発現していく傾向にあり,インスリン治療によりこれら障害が予防されうることが観察された。
- 神戸大学の論文
- 1989-09-12