日本における高品質・新技術製品発生の歴史的背景
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概要
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高品質・新技術製品の発展のためには,必ずそれを求める強力な需要者と,その求めに応ずることの出来る供給者が存在する。アジアの東端にあり,長い間後進国であった日本人は,中国や欧米先進国の新技術・新製品をいち早く導人した者が,経済的,軍事的に大きな利益がえられる,という辺境意識を持ち続けていた。この辺境意識から日本人は他国ではみられない程の旺盛な好奇心,学習意欲をもつことになる。また日本の技術開発は,ニーズによって目標がきめられ,それを実現するために既存の技術を組合わすというプロセスをとり,いわゆる独創的なものは少なかった。日本では,古代専制時代には新技術の需要者は,天皇,豪族など一部の者であり,供給者は隷属的な部民であったため,技術の発展はなかった。部民が工人,職人と変るに従って,次第に自主制をもつようになるが,鎌倉時代まではそれ程技術の進歩はなかった。安土・桃山時代に外国文物との急激な接触,内乱のたえざる発生から鉄砲の需要者がふえ,武器技術が向上したが,その後の江戸時代には平和が続き,武器技術は停滞した。しかし江戸末期には蘭学の浸透,寺小屋の普及で新技術吸収のための日本人の潜在能力が大きく向上した。明治維新から第二次大戦までは,軍が需要者となり,軍事技術は向上した。昭和40年代以降は,たえず所得が上昇して一億中流意識をもった一般庶民がより高品質・高機能の耐久消費財を求めるようになり,民生技術が世界的水準にまで急上昇した。
- 1992-08-25
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