トキソカラ症診断のためのELISAの基礎的諸条件の検討
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概要
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幼虫移行症の原因寄生体としては,種々の寄生体が知られているが,なかでも犬回虫や猫回虫を原因とする疾患(トキソカラ症)がその症状の激しさや,診断の困難さの点から特に重要であるとされている。著者はトキソカラ症診断のための酵素抗体法(ELISA)の至適ELISA(OEM)と簡略ELISA(SEM)を目的とした実験を行った。あらかじめ行った予備実験の結果,犬回虫幼虫の排池・分泌抗原(ES抗原)が,同時に比較した他の成虫抗原や虫卵抗原よりも明らかに強い抗原性を示した。ES抗原を用いて実施したOEMの至適条件は以下の如くとなった。即ち,(1)感作10μg/mlの蛋白濃度のES抗原で4℃,24時間処理する,(2)一次反応:100倍で希釈した血清と37℃で1時間反応させる。(3)二次反応 : 1.000倍希釈したコンジュゲートと37℃で1時間反応させる,および(4)三次反応 : 基質(azinobis) と室温で1時間反応させる,という方法である。一方,SEMの条件は上述のOEMの諸条件を基とし,一次,二次および三次反応の時間を半分に短縮したものである。OEMは何回かの繰り返し実験の結果,良好な再現性を示した。また,OEMとSEMの判定結果はともによく相関していた。以上の結果より,これら両法はトキソカラ症診断のための有効な手段となると考えられた。
- 神戸大学の論文