糖尿病性合併症の成因に及ぼす Maillard 反応調節機序に関する実験的研究
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概要
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Maillard反応は,蛋白のアミノ基と還元糖との非酵素的結合であり,老化及び糖尿病性合併症などの各種病態との関係で注目されている。著書は今回,Maillard反応中間代謝産物3-deoxyglucosone(3DG)のMaillard反応調節系に及ぼす役割を検討した。3DGは等濃度のglucoseに比べ牛血清アルブミンに作成された蛋白のglycationの蛍光を増強させ,lysozyme蛋白の重合化を促進した。さらに,collagen蛋白のcollagenaseによる被消化性の減弱をもたらした。以上3DGは,Maillard反応後期段階でcross-linkerとして働き,蛋白の架橋形成を促進させ,組織変化を生じ,糖尿病性合併症の病態形成に関与する可能性が判明した。一方著者は,polyol代謝の律速酵素であるaldose reductase (AR) の3DGに対する作用を検討した。ラットレンズより抽出したARは3DGを基質にした。ARのD-glucose及び3DGに対するK_m値は,それぞれ137mM及び1.3mMであり,3DGに親和性が大であった。さらに,ARは3DGに作用し,3DGによる蛍光増強作用並びに蛋白の重合化促進作用を減弱させた。以上,ARはpolyol代謝を促進させ,Maillard反応を抑制することが判明した。3DGを中心にMaillard反応とpolyol代謝との関連に関する本研究は,糖尿病性合併症成因の解明とその予防,治療への新しい展開につながるものと考えられた。
- 神戸大学の論文