弱い牽引力によるチンキャップの長期使用が下顎頭位に及ぼす影響
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概要
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本研究は, 弱い牽引力によるチンキャップの長期使用が下顎頭位に影響を及ぼしていたのか否かという点について検討したものである.対象はAngle Class III前歯反対咬合者15名(初診時平均年齢9歳9カ月)である.これらは治療開始時より平均4年6カ月間チンキャップを使用した.使用したチンキャップは頤部の荷重250gであり, 使用時間は1日12時間である.資料は15名30関節の術前と術後の顎関節経頭蓋X線規格写真60枚である.計測は万能投影機を用いて10倍に拡大トレースしたものを用いた.前方と後方の関節空隙を計測して, その比(以下A/P比)を下顎頭の前後的位置関係を表す指標とした.そして, 個々の顎関節の術前と術後のA/P比変化を算出した.結果は以下のとおりである.1. 術前・術後のA/P比変化は平均0.14であった.術前のA/P比は平均0.78, 術後は平均0.92で, 両者間に危険率5%で有意差を認めた.2. A/P比変化および顎関節症発症の有無により, 30関節は3タイプに分類された.タイプI : 18関節(60%).明らかなA/P比変化を認めず, かつ顎関節症の発症を認めなかった.タイプII : 10関節(33%).明らかなA/P比変化を認めたが, 顎関節症の発症を認めなかった.タイプIII : 2関節(7%).明らかなA/P比の変化を認め, かつ顎関節症の発症および症状悪化を認めた.3. チンキャップ使用期間とA/P比変化との間に明らかな相関を認めなかった.4. 治療開始年齢とA/P比変化との間に明らかな相関を認めなかったものの, 11歳以上の患者はA/P比変化を示さなかった.5. Ramus inclinationが大きく変化したものは, A/P比にも変化を認めたものが多かった.成長期に長期間にわたってチンキャプを使用した患者のなかには, 下顎頭位が後方へ変化するものを認めたといえる.そのため, 個々の患者に対して十分な診査と管理が必要と考えられる.
- 日本矯正歯科学会の論文
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